随筆/日記
公文書

'08.4.22  随筆

 人の髪を綺麗に結える男性は、極めて少ないのではないか。勿論そういう仕事に就いている人は除いての話である。

 女性同士では日常的に髪を弄っている光景を目にすることはあるが、男性は髪を束ねていることが少ないので同性の髪を弄る機会がない。そもそも男は髪を弄り合う様にはできていない。そういう男達を見掛けたら普通は眉を顰めるものだろう。

 また、人の髪を弄る習慣自体がないから、恋人なり妻なりの髪でも弄っている男性は、これも多分極めて少ない様に思うのだがどうだろう。自分にはそんなことをした記憶は全くない。

 それでも自分の娘の髪くらいは弄る。私には娘が二人いるのでさすがに二つ結びくらいはしてやれるけれど、しかし三つ編みはできない。未だに構造がよく理解できていないのだ。単に私は不器用なのかもしれない。細い内径の自転車のハンドルに取り付け基部を削り込んでバーエンドミラーを取り付けることはできても、実は折り紙で鶴を折れない。不器用と言うより役立たずか。

 私が娘の髪を弄るのは朝の出掛けの忙しい時が多い。だから大概はいらいらとしながらやっている。しかし本当は娘の髪を弄るのは嫌いではない。埃だらけだったりしても愛しいのは娘の髪だからだろう。娘だと、綺麗にしてやらなきゃという思いもあるからか。

 もっとも、小4の娘は自分で整える事が多いし、年長組の娘はやって貰って何かとケチを付ける。ちょっと引っ掛かっても痛いと叫ぶ。元々何につけ大げさなのだが、髪を引っ張られる痛さは、そういえば自分には分からない。

 子供の髪というのは、何かとても良い香りがする。大人の女性のそれとは違い、嗅いでいると眠くなってくる。あるいは布団で横になる時に嗅ぐことが多いから、そういう条件反射になってしまったのだろうか。娘を寝かしつけようとすると、間違いなく自分の方が先に寝てしまう。


画像の方は珍しく夫婦で出掛けた「ベアレン 再開報告&感謝の会」の抽選会で2人共当たった一杯サービス券。ベアレン醸造所再開を祝う集まりは80人超のベアレンファンで埋め尽くされていた。

関連リンク
ベアレン醸造所
We Love Baeren - ベアレン醸造所 私設応援団

過去記事
'07.8.20 「モリオカ」はロシア語風か? 夏休み前編
'08.1.26 ペアレン醸造所の事故


読書 長嶋 有「ジャージの二人」(再読) 集英社文庫

父も、妻も、義妹も、隣人も、他人として等しい。そして犬のミロも。


'08.4.11  随筆

右傾化

 整体に通い始めたという話を以前に書いたが、ここのところ通院の間が開いてしまっており、通っていると言うほどの頻度ではなくなってしまった。遅くまで開いてはいるが、そうそう間に合う時間に帰っては来られない。

 正確には「整体」ではなくて「整骨院」である。右腰の痛みの原因が、右足首の靱帯が延びているためということは分かったものの、では治療して何ヶ月で治しましょうとかいう話ではない。治療自体も、電磁何とかやウォーターベッドやら、即効性はなさそうである。まあこればかりは素人の私には何とも判断の付かないものなのだが、いずれにしてもこの通院ペースではいつ快方に向かうやらと心配になる。その辺の話をすると、医師は捻れを補正するテーピングをしてくれたのだが、まさかギプスの様に着けっ放しにする訳にもいかない。

 右靱帯が伸びているのが原因というが、それはむしろ現象の一つではあるまいかと思っている。左右の荷重バランスを欠くことに思い当たることがあるからだ。重い鞄をいつも右側に持っている。

 そこで当面、鞄を左側に持つことにした。しかしこれがなかなかに難しい。なにせ習慣であるし、また色んな物がそれに合わせてあるので、これらをいちいち変えていかねばならない。

 定期入れは右の内ポケットに入れている。空くのが右手に変わるのだから、左に入れるようにしないと改札前であたふたすることになる。一方で左にはペンを入れていた。右利きなのでその方が都合が良いのだが、定期と同じ側のポケットに入れてはすぐ落とす。

 良いこともある。右手で持って右側にある改札の投入口に入れるので、今までと違い真っ直ぐ入れられる。

 困るのは携帯電話。今まで左腰に下げていたのが、鞄に当たってしまうので右腰に付けることになる。SSの規定ではホルスターは左腰…いや、あれは何度か変わったのだったか。

 何か他に日常の生活の中で治す方法はないものだろうか。

ブログランキングのジャンルから[エッセイ]を削除して[自転車]のみにした途端に随筆連投したりして。というかあそこからうち観に来る人いるのかね。


'08.4.8  随筆

 いつもより少し早い列車に乗る。いつもと少し雰囲気が違う気がしたが、いつもだって決まった列車に乗っている訳ではなく、いつもと30分と違う列車でもなく、それは気のせいだろうなと考える。

 読んでいた文庫本からふと目を上げると、窓ガラスに1匹の蚊が止まっている。さっきまで澄まし顔で化粧をしていた斜向かいの女の首でも刺してくれると少しは愉快なのだがと意地の悪いことを考えながら蚊を見つめるが、薄ら緑色の弱々しい蚊は、人を刺すどころか、ガラスからずり落ちてはパタリと元に戻りを繰り返すのみであり、情けなく思う。

 これが家の居間だったりすれば、幼い娘たちを刺さない様に、どうせならいっそ自分を刺してくれれば良いのにと殊勝なことを考えるのに、何とも心持ちの違うものである。

 今年初めての蚊を見たのはいつだっただろう。「もう蚊がいるよ」と言うと、妻は「今はいつの季節でも蚊はいるよ」と言う。確かにいつでも暖かくて水の溜まったところはどこにでもある。

 得意先の事務所が古ビルの地下にあったが、床下が貯水槽になっており蚊が絶えないという。年中蚊取り線香の香りがするという妙な雰囲気の事務所だった。

 古ビルの床下貯水槽などというと、昔観た外国映画に出てきたパリの地下下水道網を連想してしまったりする。そこは得体の知れない空間で、どこか見知らぬ場所に通じているのではないかと考えたりする。

 高校生の頃、まだ新しかった増築部分の地下に部室があり、私たちは勝手に蓋を開けては覗き込んだりしていた。金属のトレーにボイル油を注ぎ水面に浮かべ、火を着けて精霊流しの様に流したりした。自分の部室だったと思っていたが、「地理部池」と称していたことを思いだし、あの場所は美術室ではなく地理部の部室だったかと今更ながら。

 あれはまだ新しかったから水も壁面も綺麗だったのであり、もう20年以上が経っており、今あの貯水槽は蚊の温床となっているのではないだろうか。


読書 長嶋 有「猛スピードで母は」(再読) 文春文庫

再読なのに、主人公が女の子だというのをP31まで忘れていた(笑)。


'08.4.1  随筆

酒場とピンボール

 それほど遅くない時間に上がる。そうは言ってもとっくに陽は沈んでいるが、この時期にしては早く終わったので「遅くない時間」と感じているだけかもしれない。

  大通りに出て高架の先に見えるホームは人で溢れている。そんな所に頭から突っ込んで行くのもぞっとしないし、そこを無理に乗り越えて歌舞伎町まで出るとまた長っ尻になるだろう。いずれにしても近場の酒場に寄ることにしたが、どうにもしっくりこない感じがして、結局は例によってBBLへ流れることになった。

「ピンボールの玉は、結局は出口、か」と言ってみる。
「何軒目ですか」と訊かれてもニヤニヤして誤魔化す。

 酒場とピンボールで思い出すのは初期の村上春樹作品と、そして大友克洋「気分はもう戦争」だ。私はなぜかこの作品のディティールを思い出すことが多い。ある種“心のバイブル”なのかもしれない。

「マールが6杯。それもダブル。タフだね、フリッパー」
「そうよ。試してみる? プレイヤー」「でも、ベッドの中でじゃ花車(きゃしゃ)なのよ…焼きたてのメレンゲみたいに花車で甘いのよ」

 NYの場末のバーでの怪しい東洋人と売春婦の会話をなぜだか覚えている。読んだ当時はまだ確か中学生かそこらだったし、実のところ四十を超えた今でも“ベッドの中で焼きたてのメレンゲみたいに花車で甘い女”というのがうまく理解できない。大友の絵だから、ぞくっと来るほどにセクシーなわけでもないが、あんな売春婦がいるバーというのもどんなもんだか。「うちで商売するのはお断りでさぁ」とBBL店主は言うだろうし、上下階のぼったくりバーにいる不細工なガイジンホステス相当なら冥土の連れもなしだな。

 そういえば村上作品の様に酒場でピンボールをしたことはない。というかピンボール自体を最近やった記憶がない。いま、どこへ行けばピンボール台はあるのだろう。もっとも私の球技は6mm以下と決まっているが。


画像も園芸ネタ。どうせなら雑草の方をついばんでくれ。
園芸備忘録 アブラムシ対策実施。梅に「モスピラン」、枝垂れ梅に「オルトラン」散布。例年よりひと月以上遅いか。ところで先日判明したのだが、我が家の象徴である白い花の大木は、辛夷ではなくやはり白木蓮だったのだ。

読書 角田光代「人生ベストテン」講談社文庫

万事が上手くいっていることを「順風満帆」と言ったりするが、字面だけ見れば変な表現である。風向きはいずれ変わるものだし、あるいは突然吹かなくなることもある。「行く当ての無さ」という言葉は対局の様だが、その意味で同じことを言っている。角田作品は、おしなべてこの「行く当ての無さ」を描いていると実感する。


'08.3.25  随筆

宅配便

 夕食時、インターホンのチャイムが鳴る。煩わしいなと思いつつ腰を上げ、モニターまで行くが何も映っていない。

 マイクに向かって「はいー?」と声を出してみるが反応なし。子供がいたずらをする時間でもないし、そもそもそんなことをする子供はこの辺りにはいない。誰かが来ていることは確かだが、しかし玄関先でインターホンを鳴らしておきながら一言も発しないのはマナー違反に近い物があると思うし、そもそもセキュリティ上も問題があるだろう。母はよくモニターを確認もせずに玄関に行きドアを開けてしまうが、一度注意した方が良いだろうか。

 そんなことを考えているうち、またチャイムが鳴る。モニターからは目を逸らしていたのでボタンが押された瞬間は見ていない。また一言もなしだ。回覧板を持ってくる近所の人たちは必ず名乗る。とすると、と考える間もなく、娘が玄関に走っていく。

 「駄目ー!」と追う側で妻が「またあの人だよ。押すとそのまま玄関まで来ちゃうの。いつもだよ。あの宅配便」と言う。娘を居間に返して、ドアの前で「どちら様ですか」と声をかけると果たしてその宅配便業者だった。ドアを開けると、その年配の男は俯いたまま送料着払い便の旨を告げる。インターホンで先に言えば用意して出られるだろうに。イラッと来て財布を取って戻ると、今度は釣り銭が足りないと言う。舌打ちこそしなかったが、声を出して溜息をつく。

 「物凄く煙草臭いんだよねー」。荷物を受け取り居間に戻ると妻が言う。確かに蒸されたように染みついた煙草の臭いがした。これで受け取るのが食品だったら厭だなと、喫煙者の自分でも思う。

 相互でないモニター付きインターホンは自分が間抜けになった気がして私も厭だ。しかしそれに向かって話しかけるのは宅配業者の宿命だろうに。嫌々やってる感が出ていてこちらも厭だなぁと思う次第。

 まあ、届いたのが自分の荷物なんで、家人の前ではあまり文句も言えないが。


これは何でしょう?
と。クイズにしてみたり。

小隊司令部発

本欄はサイト内の各コンテンツの更新とは別に、概ね2〜5日毎に更新中。 バックナンバーは「公文書」でもどうぞ。ブログ部分は「人気ブログランキング」に「エッセイ」「自転車」の2カテゴリーで参加中。ワンクリックのご協力を。 


'08.3.8  日記 

胃が痛い

 先週辺りはセーブしながら2日置きに更新していたのに、今週さっぱり駄目なのは、枯渇ではなく多忙のためなのである。どうやら今年もまたしばらくこの時期は忙しい状態が続く模様。こんなどうでも良い言い訳じみた話で始めるなんて、やはり枯渇なのかも知れない。

 昨日は珍しく胃が痛んだ。それはまあ、1週間に3日もタクシー帰宅する状況ならさすがにそうもなるか。元々タフではないしね。とか言いつつ、よく考えたら1日に10杯近くもドリップしたコーヒーを飲んでいれば胃も痛くなるか。原因はそっちかもしれない。やれやれ。その夜の打ち合わせはさすがに紅茶にしたが、駅の喫茶店の紅茶はコーヒーの比でなく大抵まずい。どうせならビールでという考えが一瞬頭を掠めたが(どうせ、って何だよ)、いくら相手がCさんでもそれはやめておいた。というか、そもそもメニューにありゃしない。

 そういえばもう1つ思い当たる原因があった。一昨日の夜は久しぶりにボリュームのあるラーメン(正確には「ラーメンではなく“二郎”という食べ物」)を、それも深夜に食べたのだった。タフでないのは精神だけではないのだ。

 そんな訳で、呑み損ねたビールを呑みに新宿で降りる。途中BERGの前を通ると「ポークアスピック」がまだ残っていたので1つ購入。ビアスタンドでつまみを買うだけでは気が引けるのでいつもならビールの1杯でも呑んで行くのだが(しかも安いのだ)、これからBBLに行くのに“他のビール”はなかろうという訳で店を出る。

 なぜなら、BAR BLACK LUNGはとうとうドラフトが「ハートランド」になったのだ。3月も悪い事ばかりではない。

 しかし今月は色々な手違い勘違いで手持ちがまるでない。あまり続けてツケで呑むと旨くなくなるんだよな。最近同年代の2人から言われた。「(金が)続かないでしょう?」と「依存症でしょ?」。どちらも図星なのだった。


普通盛りの野菜・油・辛み普通という、およそ通向きではないオーダー。麺はうどんの様に太く、背油の大きさはカシューナッツほどもある。

読書 大道珠貴「傷口にはウオッカ」講談社文庫

ウオツカを呑んでいて、痛いとか辛いとか感じる事が滅多にないのは、私が“傷口”のない男だからだろうか。道具に跨がってまで道を走りたがるのは、私が上手く走れない大人だからだろうか。やれやれ。


'08.2.25  随筆 

本体のメンテナンス

 このふた月ばかり、前歯が浮いた感じがしていた。別に誰かを口説いていたとかそういう比喩ではなくて、実際にどうもグラつく感じがするし、時々鈍い痛みもあった。

 この前歯は作り物である。小学生の時に折ってしまい、何度かメンテナンスして、今の歯になってからは多分10年は経っているのではないか。と言ってもそう高価な物でもない。覚えていないのだから多分そうだろう。1本だけセラミックで10万以上掛かった歯がある。歯科医は厭な感じの男だったが、15年メンテフリーの所を見ると、モノは確かだったのだろう。しかしそう考えると、安価な(多分)前歯の何と素晴らしいコストパフォーマンスか。

 そうは言っても躯本体の方は40年超である。そう考えると代謝しない部品が10年も自分に付き合ってくれているということであり、ではそろそろではないかとも思う。また、歯茎は筋肉であるから、歳をとればそれは衰えてくる。従って歯の支持も甘くはなってくるのであろう。

 結局歯医者に通うことにした。自宅近くの歯医者なので、治療の日は早く帰らないとならない。歯医者の治療を終えてから電車で1時間なんて考えられないのである。

 ついでにという訳ではないが、これも家の近くの整体に通いだした。きっかけは突然の腰の痛みなのだが、原因は足首にあったのだった。右足だけ靭帯が延びており、その捻れが腰に影響しているのだとか。実は時々何もない平地で右だけがつまづくことがあったがこのせいだったのかと納得。もっと変な原因でなくて良かった。

 ちなみに、リラクゼーションマッサージの類(得意先のテナントだが)に行くと1時間6千円とか掛かるところが、その整体は初診1,200円、1回500円である。内容が違うと言えばそうだが、何か今まで無駄金使っていた様な気がしてしまう。

 ところで、歯医者に通うという事自体は読み返したら少し前に書いていた。どうやら記憶力も怪しい感じである。

'08.2.21  随筆 

禿げ狸 木の葉隠れの 餌探す

 我が家の庭には時々狸が出没する。何度か書いているが人里離れた山奥ではない。確かに郊外ではあるが新宿から各停でも30分程度で、若干農地はあるが普通の住宅地である。しかし大学の敷地とゴルフコースに隣接し、その奥は都立公園がある。住む場所には多分困らないのだろう。

 週末、テラスに置いてあるJEDI(折り畳み自転車)を居間から眺めながらどこを弄ろうかなどと夢想していると、無防備に目の前に現れた。人間の視線を感じないのだろうか。しかも目が合ってじっと見つめる(様に見えた)ものだから、反射的に手元の「うなぎパイ」を投げ与えてしまった。

 ちなみにこの話を会社でしたら、日頃は道に迷うし1人で喫茶店も入れないしズレたリアクションばかりのH嬢が目を見開いて「野生動物に餌付けしちゃ駄目!」と怒りだした。動物(大抵は猫)の話になると人が違う。挙げ句に「餌付けして増やして銃で撃つなんて酷い」とも。しないしない。

 狸は目も鼻も悪いのか、初めは庭に散らばる木の葉と「うなぎパイ」の区別が付かず直径1m程の場所をウロウロしたが、やがてくわえるとポリポリと食べ始めた。ふと、庭に居着かれてもそれはそれで困るかと考えたが、1匹では増えようもないかと思い直す。しかしお隣の話では3匹はいるというし、家人も違う個体を目撃していた。

 私が出会すのは、この毛の禿げた奴ばかりだが、家人によればなんとチョッキ風の服を着た奴がいるという。どうにもコミカルな感じがするが、飼われていた時に着せられていたのなら脱げずに困っているのだろうと可哀想に思う。

 ちなみに、庭には猫も来るが、目が合おうが震えていようが餌をやることはない。餌付けするとかしないとかではなく、ご近所の猫だからである。


この時期に生え変わりでもないだろうから皮膚病なんだろうか。さすがに寒いのか震えていることも多い。

'08.2.18  随筆 

ながら吸い

 私は喫煙者だが、吸う本数は少ない。日に5本から多くても10本程度。事務所のベランダか酒場でしか吸わないので、連休があると1週間くらい吸わないこともある。だからという訳でもないが、禁煙をしたことがない。

 このご時勢なので喫煙者の肩身は狭いが、殊更に狭く感じている喫煙者にはほとんど病気の様相を呈している方もあり可哀想にすら見える。しかし一方で大半は同情の必要もない無神経な人の様である。道端に点々と捨てられた吸い殻を見掛けると、ああ、こういう人達は立ち小便もするだろうし、人前で痰も吐くだろうし、のど飴の包み紙をポケットに入れたりなんぞはしないんだろうなと想像する。いや、今回はそういう話を書くつもりではなかった。

 私が暫く喫茶店員をしていた頃、いくつかした失敗の中でも割合記憶に残る失敗がある。

 いかにもアパレル系の店員である若い女が、アイドルタイムにサンドウィッチセットを頼んだ。この時間にオーダーされるフードメニューの多くは、その使命を全うできないことが多い。特に若い女性が頼んだ場合はそういうことが多い。例によって半分ほど手を付けたところで女は趣味の悪いモノグラム柄のケースに入れた煙草を取り出し火を付けた。私は気を利かせたつもりで歩み寄り、「お下げして宜しいですか」と訊ねたが、女は街頭のキャッチセールスでも見下すような目つきで一瞥して「まだ終わってませんけど?」と吐き捨てるように言った。私は「失礼しました」とだけ言って下がったが、台詞の“吹き出し”がそのままそこに残ってしまった様になった。若い自分はそれでも舌打ちを心の中だけに納めたが、あれはどういう流儀なんだろうか。私は別にグルメでも何でもないし、何とか主義的な食事の採り方もしていないが、単純に、飯を喰いながら煙草は吸わんものだろうと思うが。

 ちなみに酒場では呑みながら吸う。禁煙のバーなんて気持ち悪くて入る気にもならない。だからBBL(Bar Black Lung=“黒い肺酒場”)に通っているという訳ではないが。



一箱吸い切らず酒場近くでまた買うので、自宅と職場に半端な箱が山となる。

読書 東野圭吾「手紙」文春文庫

妻のお薦めにて。少年の不幸な結末が…って、重松の「疾走」と混同しながら読んでしまった(苦笑)。映画版はバンドでなくて“お笑い”になっているのと地味であることに意味のあるヒロインが沢尻エリカというのが激しく違和感。


'08.2.10  随筆

love.XXXな人妻

 私が市内の学童クラブ父母会の連絡会で役員をしているという話は何度か書いているが、今回は苦労話ではなく笑い話である。

 この団体では、役員は全て連絡用MLに参加する事になっており、それが段階別に2つと、私の担当する部署内のものと、合わせて3つのMLが稼働している。ML管理担当の私は都合50名超の名簿を預かる事になる。何せ毎年メンバーの変わる団体であるし、あくまで私用のアドレスを預かるので、そういう意味では組織支給のアドレスを管理する企業より気を使う訳だが、それ故にまた違う方向に神経を使わされてしまう事もある。

 構成員の大半のメルアドは私物ケータイの物である。従ってどうネーミングしていようと個人の自由ではあるが、どうにも公用に適さないアドレスの方も多いのだ。確かにストレートに名前をケータイアドレスにする事自体難しいが、こうはしなくても良かったのではと思ってしまうものも、あるにはある。

 特に働くお父さん・お母さんは、子供に対する気持ちが強いのだろうか、子供の名前や愛称を織り込んだアドレスも結構ある。名前だけならともかく…というのが今回の笑えるトラブルの元である。

 ある日、役員のお母さんからの電話があった。「仕事中ごめんなさい。でもSさんメールをシカトするんですも〜ん」という調子である。陽気な人なんである。私は半月ほどの間に彼女から書類を受け取らなければならなかったのだが、いつどこで渡しましょうかという用件だった。結局雪が降ったり私が病気になったりが重なったので郵送していただく事にしたのだが、さてそんなメール受けていただろうか。

 後日、少し前の削除済みメールの山から当該メールを発見した。しっかりスパム扱いとなっていた上に目視でもパスしていた。件名が「いつにします?」で、アドレスは並べた二人の子供の名前に添えてlove.XXX-XXX@〜なのである。

 開封しないよな、普通(苦笑)。


'08.2.6  日記

悪寒と予感

 一日中眠った。横になって過ごすとか、ベッドで本を読むとかではなくて、文字通り眠り続けた。時々目が覚めて、何かうまく寝続けられんなと思っても、トイレに行き、そして白湯の一杯でも飲んでから横になると、また10分位で寝てしまう。三重に布団を被っていても寒気がするし、寝返りは1/6回転ずつしないと関節が痛む。ああ、こりゃあ思うより具合が悪いのだなと実感するが、ともあれインフルエンザであるからそれも当たり前といえば当たり前の事か。熱もないのにと思いつつ、計ってみれば日頃熱のでない私が38度であった。

 このところ何やらネガティブな夢(しかも記録ナシ)が続き、こういうのが季節的なのはまずいんじゃなかろうかという悩みが素人考えでありはしたが、さてインフルエンザの予感だったとは、とまで言うと言い過ぎか。予感も何も、家人3人がインフルエンザに罹っていたので、まあ日頃から大して心身共健康でもない私が回避できる訳もないだろう。…と言いつつ母と妹は何ともないが。

 ともあれ期限も来たし仕事の締め切りも来たしで今日から出社である。症状に関わらず飲み切るということで「♪タミフル片手のジェットマシーン」か(若い人にはわからんな)。

 ところで、朝起きると何かの音楽がなぜだか頭に残っていて気になるという経験は誰にもある事だと思うが、インフルエンザ休み最終日の私はそれがThe Chemical Brothersの「Do It Again」だった。なんでだろうなぁと思っていたが、このところズキズキすることのあった前歯が気になり、歯茎を触ると腫れている事に気付き、休んだついでに歯科にも行く事にした。これがまた数年に一度という様な施術を後日やらなくてはならない事が判明した。同曲のPVは「少年が虫歯を治す」という内容(端折り過ぎだが)なんだと妻に説明するがふぅんでもない。まあいいや、あのPVが歌詞自体に関係あったのかも怪しいし。

Youtube「Do It Again」The Chemical Brothers


'08.1.26  随筆

ベアレン醸造所の事故

 昨年夏の家族旅行では盛岡を訪れたが、盛岡にしたのは当時のNHK朝ドラの舞台だったことと、「ベアレン醸造所」があったからだった。盛岡では醸造所へ行って見学もしたし、現地でしか飲めない限定ビールも飲んだ。

 「ベアレン醸造所」は、ドイツで買い付けた旧い機材を使い昔ながらの製法でビールを造っている地ビールメーカーである。ヨーロッパではこういった機材のリサイクルが確立されている。クルマの世界でも30年前に製造中止になったモデルのパーツがリビルド品として流通していたり、文化にそういう素地があるのだというのが分かる。

 「ベアレン醸造所」自体は2001年創立の若いメーカーで、創業社長を含め6名の社員は皆若く私と同世代くらいである。ビール好きが集って作ったビールメーカーというのが良いし、商品展開や宣伝には垢抜けたセンスの良さも感じられる。

 ネット通販に力を入れており、空き瓶回収もシステム化され近所で買うのと変わらぬ感覚で取り寄せができる。我が家では妻のお気に入りで、この2年ばかりは我が家の常備ビールとなっている。

 肝心の味の話を書いていないが、私に僅かながらの文章を書く能力があるとしても、味覚に関わる表現力は極めて稚拙であり、このビールの味について書くことは恐縮でありご勘弁いただきたい。大酒呑みの私には勿体ないし妻のお気に入りなのでいちいち断って少しずつ飲ませて貰っている。

 その「ベアレン醸造所」で22日13時20分頃、貯蔵タンクが破裂。社員でブルワーの佐々木さんが巻き込まれて亡くなられた。

 現時点では原因究明などのため業務は停止中となっている。社員6名の企業である。こういう事故は致命傷になりかねない。しかしこれを乗り越えてきちんと営業再開してくれればと切に願う。最近ありがちな狡い心持ちで回っている企業でないことは消費者であるこちらが承知しているし、応援したいと思う。

 最後になるが、佐々木さんのご冥福をお祈りしたい。

'07.8.20日記「モリオカ」はロシア語風か? 夏休み前編
ベアレン醸造所(現在、サイトは閉鎖中)


'08.1.15  随筆

社会科見学のミス、社会でのミス

 小学生の時の社会科見学はどこに行っただろう。実は全然覚えていない。楽しかっただろうと勝手に推察しているが、実際、自分の小3の娘は下水処理施設の見学が余程印象に残ったと見えて、しばらくは道を歩いていてマンホールを見掛ける度に、「あれは汚水。あれは雨水」とか叫んでいた。なぜわざわざ叫んでいたかというと、歩いていたんじゃなくて自転車で走っていたのだった。危ないなぁ。

 ところでこの下水処理場見学が困ったもので、なぜだか昼食直後に設定されていた。それも含めたタイムテーブルの無理矢理さに事前に妻は首を傾げていたのだが、ともあれ場所が悪い。何せ本物の汚水管の途中をガラスで仕切った展示など見せるものだから、気持ち悪くなって吐いてしまった子供がいたそうだ。実際、娘の「管の中にボロボロの紙とか混ざって見えてて」なんて表現を聞くと、こちらまで気分が悪くなってしまう。

 それにしてもこのご時世よく問題にならなかったものだと思い驚く。自分がその子の親だったら、それなり抗議しただろうと思う。あくまで「それなり」だという気がするが。それはどう考えても下らないポカであるし、もし一般の会社で同種のミスを犯したら、得意で頭を下げてきた上司に「ボケ」とか言われる程度ではあるだろうが。もっとも、このケースはどうか。誰も何も言っていない様で、それはそれで若干うんざりもする。

 モンスターペアレントなる言葉が最近生まれたが流行語には選ばれなかったのだったか。私も娘の学校でトラブルがあれば学校やら役所に積極的に働きかけをする方だが、ロジックに適うことしか言わないので私はそれに該当しない(断言)。それに、こんなバカみたいなポカで過剰反応されたら本意でないし逆にうんざりする。

 しかしうちの担任は産休代理で来年いないだろうってな人だし、校長は校長で、趣味が高じて学校の中庭に作った農園のために夏休み児童立入禁止にする様な人だしなぁ…。


連休中日は地域行事の終日手伝い。小学校の校庭でどんど焼きである。伝統行事の様なのに卒業生の自分が知らないのでいつからかと思ったら25周年とか。よく続いていると評する来客もいたが、長い様で短い気がして不思議である。



'08.1.2  日記

謹賀新年

 「1月は正月で酒が飲めるぞ〜♪」という訳で呑んでいる次第。まあ理由がなくても年中呑んでいるのだが。しかし午前中から居間で呑んでいても誰も何も言わないのは正月ならではか。

 今年は例年とはだいぶ違う出だしとなった。恒例の栴檀林小隊越年演習を中止にしたのだ。参加者も少なそうだったが自分の体調も芳しくなかったので。考えてみればかれこれ20年ほど続いている行事なのだが、そろそろ気力と勢いでイベントを遂行するのも難しくなってきているのかも。

 連休に向けて仕事の辻褄を合わせる25日前の時期に年賀状の様な凝った印刷制作物(さすがに出来合いは使わない)を作れるわけがないので、年賀状はこの間に作ることになる。作って貰うことに関しては仕事でこなすが自分で作るのは遅いんである。松の内に会う人には年賀状は不要というのが常識だと思っていたが、そうじゃないと言われたり、上記の様な次第で会わなくなってしまった人達もいたりで、いそいそと作る。そういえば、年末集う20年来の悪ガキ仲間の住所を近年きちんと把握していないことに気付く。というかそもそも名簿作りは小隊長である自分の仕事な訳だが。

 一仕事終え一眠り終えてアルコールの抜けているのを確かめ、走り初めという程でもないがJEDIで市内を走る。市の中心にある郵便局の本局に年賀状を出しに行っただけだが。サイコンで測っていないが往復十数キロ程度か。最終回収が近所と本局で4時間違い18時なのだ。

 まだあと4日休みがあるが、こういう次第でほとんど走りには行かんだろうなぁ。それを見越してメンテ用のケミカルを買ってあるのだった。チェーンの洗浄でもするか(地味だな)。

 あとはサイトの更新と修正か。そんな訳でこの休み中にどこかが変わるかもしれないので気が向いたら再訪を宜しく。

 あ、今年も宜しく。


そんな訳で今年の年賀状。正式版は、見られる人は親族・知人向け某サイトで。


妻取り寄せの「フォーミュラニッポン公式発泡日本酒」とおせち。旨い。そして頭が痛い。


純正の「フィニッシュライン・ディグリーザー」が切れたのだが、湿式フィルタークリーナーで充分代用できるとか。「ドライテフロンルーブ」は「メンテルーブ」で。こちらの方がノズルの作りが良い。