 今週の読書 片岡義男「缶ビールのロマンス」角川文庫(再々読)
本欄では'04年9月にワンコメントだけ書き、その前は約30年前に読んでいる。とりあえず表題作だけ読み返してみた。恋人が連休に別荘で独り待っているというのに、オートバイで途中わざわざ温泉宿に寄り道したりして結局辿り着かずすれ違うという話。高校生の当時は、こういう男女間のバランスはあるのかも知れないが、大人になったら腑に落ちるのだろう位に思っていたが、多分今はもう大人なのだが私には分からん。好きな女になら一刻も早く逢いたいと急ぐだろうし、そうでもないなら、特に義理もないのに別荘に泊まりにいく約束なんかしない。ロマンスなのかそれ?
 今週の読書 伊藤たかみ「八月の路上に捨てる」文春文庫(再々読)
本欄では'09年8月と'10年12月に取り上げているので今更書くこともない気もするが、意外にも昨年の冬と今とで感じ方が違う。いやあるいはその時の“感じ”を覚え間違っているだけかも知れないが。夫婦の関係が駄目になっていたところに夫が浮気によって離婚を決意するが、離婚するなり浮気相手には逃げられる、という時系列で事実だけ書いてもこの物語の本質も雰囲気も全く伝わらないのは当たり前か。この作家にとっては、離婚ですら“穏やかな他者の肯定”なのだろう。
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