今話題の広告に「クラウド戦車」というのがある。キャラクター等ではなく、実在のリアルな戦車の車体全面に、バスや電車に良く用いられるラッピング広告を施している。広告主はクラウドのグループウェア最大手サイボウズ社。実在しない身近な存在を、実在する非現実的な存在で広告するという面白さを狙ったのではないかと想像していたのだが、サイトを見ると契約顧客数1,000社=センシャ達成記念なのだそうな。…まあ企画書にはその手のことは書かれていただろうけど。
ちなみにこの戦車、“お好きな方”には一目で分かる有名なプロップ(映画などで用いる大道具)である。自衛隊の61式戦車を模して作られたもので、'79年公開の角川映画「戦国自衛隊」などに登場している。今回の広告で健在なのを知って多くのマニアが感嘆の声を上げたのではないか。
日本の映画には三大プロップ戦車(私が勝手に命名)がある。この“戦国61式”と、「226」(松竹'89年)に登場した物。そして「馬鹿が戦車(タンク)でやってくる」(松竹'64年)の“馬鹿タンク”である。
この内「226」の戦車については、既に当サイトで取り上げている。そう、那須戦争博物館のあの怪しい戦車である。3台作られたこの戦車は、映画公開後に専門誌(と言ってもなぜか「アームズ・マガジン」)で売却の広告が出ていたそうだが、売れ残りの末に1台は那須に、2台は寄贈の形で夕張「花とシネマのドリームランド」に渡り、いずれも朽ちるに任せている。
三大プロップ戦車の中では最古の“馬鹿タンク”だが、実は実走可能の状態で現存しているという。ランクルエンジン搭載の雪上車改造“馬鹿タンク”は、戦国61式と共に神奈川県の自動車修理解体業・鈴木商店が所蔵し、劇用車として貸し出している。
プロップということではあれこれ言うのだが、その実車には結構ウキウキしてしまうのは男の子気分が抜けていないからか。
|

「那須戦争博物館」にて。時代考証からすれば92式重装甲車なのだが、下半身がなぜか97式チハ風の「226」鎮圧部隊の戦車。
訪館当時のレポートはこちら。

その226戦車が当時雑誌で売りに出ていたという。「アームズ・マガジン '89年4月号」。…物持ち良いってある意味怖いな。発掘したら本当に載っていた。それも全然欲しくなる様な写真でないという。[クリックで拡大] |