待望のシュネルフォイア

'07.1.25 小隊司令部発

マルシン工業
モーゼルM712 8mmBBブローバック
\20,790(税込)

 猛烈な愛国者パウル・モーゼルによって作られた通称モーゼルミリタリーM1896(C96)は、世界中に広まりはしたが、結局ドイツ制式となることはなかった。その意味である種不運の銃と言えるかも知れない。そのセレクティブファイアモデルであるM712は時を経て第二次大戦に活躍の舞台を持つこととなる。質至上の武装親衛隊が急速に量拡大をする中で不足気味であった短機関銃の代替として支給されることになった。迷彩スモックを着た武装親衛隊員がM712を手にする有名な写真がある。使用弾薬の7.63mmモーゼルはソ連がPPSh41等で使用する弾薬と互換性があり(元は同じなので)、敵地での現地調達が可能になるのも有利であった。ともかく、東部戦線の独軍をある意味象徴するような銃だと言える。

 以上が私にとってのモーゼルM712という銃であるが、つまりもう旧い銃なのである。最近の漫画やらでの流行はよく知らないが猛烈なブームというのは聞かない。その辺の意味でも今、このモデルアップというのは貴重である。そしてガスBLK化はマニアの悲願でもあった。


シュネルフォイアと言えばホルスターストック。ちなみに木グリップは一緒に購入してすぐに取り替えた。ホルスターストックと色が合わないのはご愛敬。 
外観
 M712は誰もが認める大型拳銃であるが、フレームの幅はかなり細く、そこにユニットを納めセレクティブファイヤにするのは技術的ハードルが高かっただろう。本作はしっかりリアルサイズなモデルガンの側に収まっている。若干のアレンジは勿論ある。機構上ボルトが2段式になっているのが目に付くし、よく観察するとアッパーフレームの厚みがポートより後でやや増やされていることに気付くが、どちらも大した違和感は覚えない。

 それよりも残念なのは、折角メーカー公認を得ているのに刻印が減っている点。HOP調整穴の開くチャンバー上は仕方ないにしてもマガジン底面はスライドカバーにするなどで工夫して欲しかった。

作動と構造
 作動にはクセがある。セミの時に浅くトリガーを引くとフル作動してしまう。取説にも注意書きがある。ガスのない状態でトリガーを引くと最後重く粘ってカチンと音がするが、この位置まで引かないとシアがディスコネクトされない様だ。

 現時点でまだ全バラをしていないのだが、パーツリストを見るとモデルガンでは再現されている「シアーディテント」がない。これはトリガーとシアーの間にあるディスコネクトに関係するパーツだが、その作動はショートリコイルすることで行われるから、他のパーツでこの機能を代替させねばならない。そこでこの様な形式になったのだろう。フルオートは、実銃通りフルオートシアにあたる「キャッチ・ホック」によって行われるためちゃんとしたサイクルなので、セミでずっこけた時とは全く異なる。

 一方で機構全体は、実銃同様に再現された「ロック・フレーム」により工具無しでフレーム後端から抜ける構造になっているのが嬉しい。


左は金属モデルガン。チャンバー上面と側面の刻印が味なんだが。2段ボルトは見慣れるとそれ程気にはならない。サイトのベース部分が微妙に幅を増しているのがわかる。


左はモデルガンのマガジン。丁度被せられる大きさの気もするが(笑)。

材質
 ここのところ私がマルシン製品を取り上げる際にしつこく書いているのは、亜鉛ダイキャストの質の異様な低下という問題だった。マルシン工業にメールで問い合わせしたくらいだが、どうやら本作ではその問題は解決されている様である。ボルト上面は鏡面仕上げのように滑らかだし、タンジェントサイトの数字刻印はシャープである。勿論それが当たり前の品質なのだが、非を認めずとも改善されたのは喜ばしい。

規格
 モデル化があまりに嬉しくて書き忘れていたが、本作は8mm弾仕様である。それでなくとも狭いマーケットで、共用可能な規格をわざわざ独自の物に変えるなどというのは愚行、というのが8mm弾に対する私の考えである。ましてや大したメリットもない。マルシンには、やや大きめの自社規格6mmBB弾(旧SMブルー)を標準にエアガンを作っていたという過去があるが、あれを失策とは考えなかった訳だ。ともあれ、7.63mmモーゼルの小口径高速弾のイメージと違うと感じるのは私だけではないだろう。同社SIG210の様に6mm版が発売されることを切に願う。

仕上げ
 今時の標準的な艶消し仕上げ。鋼鉄魂からの削り出しであるモーゼルには似合わないので、ぜひお得意のメッキモデルをと願う。それと、観賞用に購入予定の諸兄は木グリの同時購入を勧める。MAXIより情けないグリップが付いてくるからだ。ケミウッドですらなく、塗装の木目はあろうことか凹部に届いていない。この銃を買うのは、頑張ってお小遣いを貯めている子供達ではなくてそれなりのおっさん(失礼)がマジョリティなのだから、あと1〜2割高くてもその辺しっかりした方が購入対象層には合っていると思うが。


ボルトを引いてうっとり、なんていかにもマニアぽい。但し、残念ながらホールドオープンの機構はないので、ずっと引っ張っているしかない。



最後に何ではあるが、パッケージデザインも商品の内と心得て欲しい。マルシンはとにかく酷い。仕事だったら私はきっと「これは捨て案か?」と言うだろう。

総評
 読み返すと辛いことばかり書いていた。本作が悪い訳ではなく、期待が大きいがため点が辛いのである。昨年末12月に発売予定だったが、最初の出荷が異例の少なさでほとんど店頭には出回っておらず、私は買い逃したので通販店に再入荷待ちの予約を入れてこの1月20日に入手できた。

 「買いか否か」と言えば勿論「買い」だ。ASG史上2挺目のセレクティブファイアM712であり初のガスBLKモーゼルであるし、他社がこれ以上のレベルでM712を作ることはないのである。御同輩は迷わず購入されたし(文体からして既に旧式だな)。

 

サイト内関連リンク
フジミ モーゼルM712「フジミ・モーゼル インタビュー」
マルシン モーゼルM712 MAXI「新製品 即断 速報」

蛇足。「モーゼル」は最近「マウザー」と表記するのが一般的だが、当サイトではあえて古い表記のままでの統一としている。

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