MGCルガーP-08BLK

 久しぶりに地元の酒場Hに寄った。ママが私の顔を見るなり開口一番に、常連のKさんがネットオークションで古いモデルガンを買ったという話をする。「MGCのルガー何とか」で「弾がない」のだそうだ。知らない人でもなしお話伺いましょうかとなり、ママが電話をするとすぐに店に来るという話になった。

 

 誰にでも「これは弄り倒したな」というモデルが1挺はあると思うが、私にとってMGCのプラルガーP-08は、その代表と言えるモデルガンである。しかもよくよく棚を見ると同じ物が3挺あった。

 MGCらしいと言えばこれ程MGCらしい製品もなかっただろう。寸法よりイメージを重視するフォルム。再現より作動を重視する機構。中身を見ればおよそオリジナルからは遠いこのルガーP-08は、それでも一時代を築いた。

 

 作動は抜群なのだがメンテナンス性は極端に低い。上下のフレーム分割にまずセフティレバーを止めるEリングを外す必要がある。殆ど工具を要しない実銃とはえらい違いである。組み立て時は両サイドのプレススチールのインナーフレームを抑え込まないとEリングを填めるための溝が現れないことがある。トリガーバーとシアーにテンションを与えるスプリングが掛けにくいなど、取説のイラコバ氏のイラストがいくら分かりやすくとも、コツを掴まなければ組み立てもままならない。

 また打撃の弱いストライカーに代えてMGCはハンマーを採用したが、こいつがリコイルでフレームのインナー部分(部品名はなぜか「グリップウエイト」)の薄い壁を曲げてしまうのがこの製品のよくある障害だった。最悪マガジンが抜けなくなる。またカートがデトネーターに噛み付きやすく、無理矢理デトネーターごと排莢させるものだからインサートに刺さっているだけのデトネーターは抜け癖がついてしまう。などなど。

 好きで付き合っていたのは確かだが、分かれて思い出すのは苦労したことばかりという。イイ女だったのは確かなんだがなぁ。もっとも、当時中学生かそこらだった私がちゃんと整備などできる訳もなく、そこは差し引くべきではあろう。

 


右からCP、紙火薬、実銃ダミー。この画像では分かりにくいがMGCのは直径8mmしかない。

チャンバー近影。左から最初期紙火薬、後期紙火薬、CP(キットをメタル調に塗装)。フォロアーが違うのが分かるだろうか。
 さてカートの話になるが、設計上内寸に余裕のないバレルには9パラどころではない25ACP並みの細いカートリッジが収まる。同社SIG210と共用のこのカートは、結局はMGC終焉を迎えるまで仕様を変えて延命することになる。紙火薬仕様のオープンデトネーター方式に始まり、キャップ火薬仕様、CP、CP-HWと4代に渡るモデルチェンジをした。だから「中古のMGC P-08 BLKを入手しました」と聞いても、迂闊に面倒を見るとは言えない。何せカートは勿論バネなんかもそれぞれ違うのだ。

 しかして問題のプラルガー。チャンバーを覗き込むと紙火薬仕様のオープンデトネーターが見えた。マガジンフォロアも旧いタイプのようだ。幸いにも、実のところ私が主に弄り倒したのはその代の物なのである。後日手元に余っている予備カートを差し上げる約束をして全て解決した。程度は特に悪くはないしインサートは綺麗だが、フレームの件の箇所がやや歪んでいるのでひょっとしたら未発火品ではなく、バレルレシーバーを交換しているかも知れない。それでも作動はスムーズな様なので、さすがに撃つことはないだろうから問題はないだろう。作動が売りのモデルなのに勿体ない話ではあるが、そもそも今は紙火薬自体がその辺で簡単に手に入る物ではないだろう。

 なんか久しぶりに撃ちたくなってきたな。そうなると、紙火薬もあれはあれで味があっただなんて思い始めたりする。
 

おまけ。モデルガンP08のマスターピースモデルであるマルシン金属製と、ガスガンのタナカ2代目HWと一緒に。


 


この前のは… / さて次は…