ある日「たまには馬場で呑もうか」と思い立つ。たまにはと言うか、私が高田馬場で呑んでいたのは随分前の事だ。その頃は、歌舞伎町で呑むことに一時的にある種の閉塞感を感じて、同じ西武線1本で帰れる馬場で数軒を巡っていた。尤もそんなのもすぐに飽きてしまい、結局はまた歌舞伎町に戻ったのだが。
例によって自ブログを遡ると丁度10年前だった。乗換駅だから毎日列車内からは街を見ているし、次女の学校が近いので休日の昼間なら最近何度か降りていた。
果たして、久し振りの馬場はそんなに変わっていなかった。とは言え以前に寄ったいくつかの店はなくなっている様だった。唯一の(?)繁華街さかえ通りはキャバやガールズバーの呼び込みが増えた気がするが、まあ歌舞伎町に較べれば薄い弾幕である。
通りの途切れる辺りで見覚えのある看板を見掛けた。「saikai」は確か学生をプロフ付きで立たせてる店だったが、そこは変わらずだった。ママもご健在。ところがこの秋には建て替えのため一時休業するのだとか。“再会”は2020年。
もう1軒気になる店があった。山手線沿いの酒場長屋みたいな通りにある「こくているnico」。古いタイプのバー。10年前から古かったが。
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現存しているのは列車内から確認していたが、敷居を跨ぐと少し雰囲気が変わっていて、そもそも店の人間が違っていた。思わず「久し振りなんですが、何か最近変わりましたか?」などと妙な質問をしてしまった。聞くと前店主H氏は去年の夏に亡くなっていた。急死だそうである。元々近隣の店に勤めていて呑み友達でもあった自分が継いでいるという。
店内が変わって見えたのは、前は雑多な荷物で埋まっていた背面を綺麗にしたからだった。バックバーはほぼそのまま。ただ、黒板に手書きでぎっしり書き込まれていた惣菜が今はなくなっていた。
暫くすると常連だという初老のミュージシャン氏現る。暫く亡き店主の話で盛り上がった。
たまには馬場も悪くない。 |