随筆/日記
公文書

'19.11.25  随筆 

缶コーヒー
 先週から冬服にした。さすがに背抜きはもうと思ったら、週末はえらく寒くなってマフラーまで引っ張り出した始末。

 朝、駅に向かう途中で缶コーヒーを買う事がある。駅の自販機は便利だが定価売りで、途中路上の最近よくある「100円〜」という物だと30円程安い。しかしラインナップはイマイチで、更にある時など見本と違う物が出てきた事もある。連絡はしたが、どこにいるか分からないメンテの人が替えを持って来るまで自販機前でぼけっと待つ程暇なわけではないし。何より問題なのは、この時期のこの自販機、保温設定が高過ぎるのだ。熱くて持てない。しょうがないので、みっともないがジャケットのポケットにそのまま投げ込む。これもカイロの一種と思えば良いのだろうか。

 そう言えば、どこかのメーカーの自販機用広告POPに「缶コーヒーの人はいい人だ」というのがあった。コピーメインで写真は小さく載っている程度。通り過ぎながら、そういう気もするし、そうでない気もしたが、ある種のシンパシーは覚えた。ただそれはポジティブなものではなくて、缶コーヒーなんかに励まされてるようじゃ悪い人にもなり様がないだろという、そんな感情だった。

 缶コーヒーに関する最も印象的な言葉は、別れた妻の言葉だ。「住宅ローンのある人は、普通は缶コーヒーなんか買わない」。彼女の職場の堅実な会社員達はそうなのだそうだ。給湯室のお茶を黙って呑んでいるそうである。

 昔、会社の業績が悪くなった時に当時の社長が事務所のコーヒーメーカーを、節約のために廃止したことがあった。それは自分が取締役になったらインスタント数種常設にしたのだが。ちっぽけな飲み物に励まされる程度に私たちは弱っていることがある。たかが数種あるスティックのお茶を選ぶ一時も気が紛れるものだろう。

読書 吉田健一「汽車旅の酒」中公文庫

読了ならず。昔は読んでた作家だと思うんだけどな。


'19.11.17  随筆 

酒場では、男の方が女に声を掛けるものだといういい加減な理由
 昨夜は神田のいつもの酒場へ付き合いの長い知人と。同業者と呑むことは滅多にないから、珍しく仕事の話ばかりしてしまった。愚痴っぽくなかったかな(愚痴しかない状況なんだけど)。別れ際にこの後歌舞伎町ですか? と茶化されるのを否定しつつ、だがしかし歌舞伎町へ。お酉さんの夜に歌舞伎町行くのは人も多いし危ないんだけどな。

 いつものMに入ると、初見の娘(多分三十前)に凄く積極的に話し掛けられた。「渋くて格好良いですね」とか(面と向かって言うのか)、「お仕事テレビとかそういう感じですか」とか(何ならキミの隣の人ラジオの局アナだよ)、「お酒強いんですね」とか(うんそれは)話し掛けられて、間が開いた時にカウンター奥の鏡見ると目が合うし。

 終電近いけど大丈夫なのと訊くと「家遠いからそうなったら朝までですね」とか(最寄り駅訊いたらうちと変わらんかったけどな)、「わたし格好はチャラいけど実は仕事は地味な仕事なんですよ」とか(可愛くてフルメイクでチャラかったw)、色々話した。後日店の人間に訊いたら、某国立研究開発機関の研究員なんだと。嘘だろその漫画設定。

 まあ普通ならこれは行けると思うところだが、若過ぎてトラップっぽいし(まあ奢るだけなら構わないんだけど)、金曜の夜は家に帰らないとならないし(泊まる気だったのかよ)、そもそもカウンターは知り合いばかりで皆にやにやしてるし、間に一人いたからひそひそ話もできんしさすがに諦めた。

 惜しいことしたなぁ。尤も逃した魚というより、釣るためのアクションすら取っていないからそんな事言う資格もないけどな。

 終電前におとなしく帰宅。最寄りでカップラーメンを買って帰る。起きていた娘と食べながらアニメ観て、寝る。何もかも消化不良の夜。

(一部'19.11.7のツイートを再編)

読書 三浦しをん「あの家に暮らす四人の女」中公文庫

 読み終えるのに随分と時間が掛かった。谷崎潤一郎没後50年を記念した一連の制作物の中の1本ということだが、不勉強にて自分にはニュアンスがちょっとよく分からなかった。

 本作の途中で発生する少し唐突な設定、例えばカラスの語り部とか、亡くなった父親が土産物の河童のミイラに宿るとか(ほんとに唐突だな)には若干面食らったが、概ね三浦作品として楽しめた。いや、多分だが。 ところで本筋と関係なく本作の中で心に刺さった一文を転記しておこう。


  (アラフィフの主人公達を指して)私たちはもう、恋愛市場では残り物の部類なのであり、残り物をつまもうとする男がたまに現れたとしても、それは、家庭はあるけれど都合よく恋愛ごっこも楽しみたい、しかし若い女を振り向かせられるほどの魅力や財力はない、という半端者ばかり。

 なるほど、家庭はともかくパートナーのない私にも、若い女を振り向かせられるほどの魅力や財力はないのかも知れないし、だからこそその上で残り物を摘まもうなどと外野から見られているのだったら何とも恥ずかしいことだなと思う。知るか馬鹿。



'19.10.11  随筆 

小隊こそこそ酒場話
 馬場の某店。G街の様な古くて裏ぶれた感じの小さなカウンターバー。昔馴染みだった店主の急逝後を継いだ若いのは、水商売が長くて間合いが良かったし、前店主との繋がりも太かったので思い出話も出来た。その上、師事していた訳でもないのに何でか氷の掻き混ぜ方が同じだったんだよな。

 ただ、心にちょっと弱いところがあったらしく、暫く店が開かないなと思っていたら、失踪していた。転がり込んでた先の彼女と別れたらしいとかいろいろ聞くが、本当の原因は誰にも分からない。閉めてた店に店泊していた跡もあるそうなので、突然の事故事件とはちょっと違うらしい。一つ不義理をすると、知り合いだらけの馬場には居辛くなったのだろう。

 その後に入ったのがオーナーの知り合い。自分と同年代の女性なのだが、経験の長さ故かキャラクターか、スナックぽさが強過ぎる。とにかくずっと喋ってるし、「自転車通勤だから私チャーリーズエンジェルなの」だとか駄洒落ばかり言う。カウンターに募金箱を置いて店のトイレを洋式に改装する費用を募金し始めるし、とにかく店の雰囲気との乖離が激し過ぎた。

 ある日珍しく顔馴染みがいたのだが、入れ違いに数分で憮然として出て行った。後日他の店で共通の知り合いから聞いたところによると、壁に並んでいた先々代から引き継ぐキープボトルを、彼女が3ヶ月で一掃すると宣言したのがかなり不快だったらしく、もう二度と行かないと宣言していたそうな。それは分かるな。そしたらもう、あの店じゃないものな。色褪せた角のボトルを眺めながら酒を呑む店だったんだよ。

 そんな訳で私も通わなくなってしまった。馬場には他によく知った店もないので、また通過する様になった。


'19.9.29  随筆 

減っている。
 全体の容量が減ってるんだろうと思う事が最近多い。自分の話である。元々エネルギッシュなタイプでもないが、この1、2年程は特に、万事やる気がない。言葉はモチベーションでも生き甲斐でも何でもいい。とにかく減っている。

 これではいかんので、新しいプラモを買ってみたり、自転車を整備したり、新規の酒場を開拓してみようとしたり、知らない女性に声を掛けてみたり、仕事でも面倒臭そうな新規案件に敢えて突っ込んでみたり(そこ、まず先じゃない? w)。でもなんか、どれもどうでも良い気がしてしまうんだよな。

 今52歳だが、随分前から57歳には死ぬ様な気がしていたのに、気が付くと意外に近くなっていて驚く。それは自分の父親が57で死んだからなので大した根拠もないし、そもそも父は8年の闘病生活の末に亡くなっているので、現状ピンピンしている自分とは大違いなのだが。大体、覚悟も準備もない。

 母やまだ高2の次女の事は気になるが、まずは金か。個人的なしょうもない借金は無くしておかないとならないが、住宅ローンはあれだ、死んだらチャラになるからいいや。あとは、部屋で寝てる時に考えるのは、今自分が見上げている壁一面の棚に詰まった膨大な量のトイガンをどうするかだが、この話は前も書いたか。

 休日はただ寝ていて、起きたら呑んでいる。昼食時だけは絶対起きて、母が変な料理(カップ麺を火に掛けるとか)をしない様に声を掛け、場合によっては自分が作る。15分程度なら買い物に出たりするが(大抵買うのは酒)、それ以外は呑んでいて、他に家人がいれば、後は任せて寝る。しばしば悪夢というか、胸くそ悪い夢を見る。起きていてもいくらかの胸くそ悪い事はあるが、夢は自分の頭の中の出来事なのに不可避なのである。現実の方がまだ避けられる。

 これではいかんので、新しいプラモを買ってみたり、自転車を整備したり…する様にしている。


'19.9.15  随筆 

ドロップは何味だったか?

 終電間際となってしまった西武線内。そんな時間にも関わらず素面ぽい娘が目の前のシートに座っていて、おもむろに新品のサクマドロップスの缶を鞄から取り出した。これが、開かない。開かないわな。すると子供文具の様なピンク色の透明プラ製定規を取り出して捻りだしたんだけど、明らかに折れそう。この辺りからこちらがもじもじしてくる。

 そしたら次は自分の爪で開けようとし始める。いや無理だって。思わず私は自分の鞄の中から小銭入れを引っ張り出して、100円玉を彼女の目の前に差し出してしまった。「爪折れるだろそれ」。「ありがとうございます!」。意外にハキハキした娘だった。見れば社会人の様だが、多分歳は長女とあまり変わらない位。

 無事蓋が開き、100円玉を返されてからはこちらも文庫に集中。オヤジっぽく「飴は何味だったの?」とか訊けば自然だったかな。しないけど。彼女はそこからずっとスマホでぽちぽちしてたんだけど、これは書くよなぁと思って横目で見てた(w 終電でガラの悪いオヤジにコイン借りてドロップ舐めた、みたいなね。そんなで特にやりとりなく地元駅で下車。何か一言あっても良いのに。いや、なくて良いか。

 
駅前を歩いていると、後から両手を開いて走ってくる若い娘がいる。「おっ父さ〜ん。こんな夜にサングラスとか、お父さんしかいないわ」。バイト帰りの長女だった。「いや今の距離で眼鏡の色とか見えてねーだろ」(実際、サングラスという濃さではないし)。

 早速今の話をしたらウケた。「いや、それは秒で打つよねー」と言われる。あとは道すがらずっと娘のバイト先の愚痴を聞きながら帰った。そんな夜だった。


読書 藤沢周「界」文春文庫

久々の文庫新刊。もう出ないのかとすら思っていた。短編集と思って読み始めたため、何か藤沢周の詰め合わせみたいだな等と思っていた。何とも呑気なものだな。五十路の作家が主人公。東北を漂う。既視感のある風景と既視感のある台詞。知らずに上がったちょんの間での女とのやり取りや、温奴に一味を掛けて燗をやるとか、ああこれでもかという位に藤沢周だった。でも、なんというか、こういうのが好きなんだが。


'19.8.4  随筆 

音楽を買って聴く
 今年に入ってから4枚もCDアルバムを買っていた事に気が付いた。日常的に音楽を聴く習慣のない「NO MUSIC MY LIFE」な私なので、ましてや購入してまで音楽なぞ聴かないのだが。

 先日はキャロル&チューズデイ「VOCAL COLLECTION vol.1」を予約購入。平たく言ってしまえばアニメ作品のサントラなのだが、アニメ業界に全然関係ない人達を集めていて目新しいし、それぞれが誰かモチーフの様でいて面白い。

 アルバムではあまりないことの様に思うのだが、収録曲が全部知ってる曲だった。1クール全話観てるので当たり前の話なのだが。他のサントラ物だと主題歌以外収録されているのが単なるBGMだったり、ジングルを大幅アレンジしていたりするのが普通なのだが、このアルバムの様に劇中の楽曲として登場した曲ばかりというのは希だろうなという気がする。いや、ミュージカルとかだとこうなるのかも知れない。

 そう言えば何か物足りなく思ったら、OPのKiss MeとEDのHold Me Nowは入ってないのだった。いや後からサイト見たら先に単体で発売されてたんだけど(苦笑)。

 ちなみにCDパッケージで購入したのは、DL物はマシンが変わったりすると後の管理がむしろ面倒に思うので。外付けの光学ドライブからiTunesに移した。

 アコースティックギターの「キュッ」て音とかは普通に入っているのだけど、小技もいろいろ仕組まれていて、例えば4曲目「Unbreakable」は曲の頭の前からアナログレコードの曲間で針が拾う雑音が入ってきたりする。懐かしい(笑)。若い人に通じんのかなこれ? 日頃はMBAにモノラル変換アダプターを介してイヤホンで曲聴いてるからあまり細かい事に気付かなかったりするんだけど、家で聴く時はまともなステレオイヤホンなので。

 伝票仕事が多いと沢山聴けるんだがなぁ。

1月 岡崎体育「SAITAMA」

3月 電気グルーヴ「SHAMEFUL」(中古)

4月 Chemical Brothers「No Geography」

7月 キャロル&チューズデイ「VOCAL COLLECTION vol.1」

'19.6.30  随筆 

家族、プラスマイナス。
 6月が終わる。今年の6月は色々あったので感慨深い気もする。

 6月頭に、半年ほど入院していた母が退院となった。切っ掛けは骨折だったのだけど、入院中どうも様子がおかしく感じて、改めて検査を受けたら脳腫瘍だった。そして別の大きな病院で手術して再入院。その後地元では有名なリハビリ専門病院にいたが、状態も安定した(つまりその先は特に良くはならない)ので退院ということになった。介護認定も受けているし、認知症ではないものの行動に怪しいところがあるため、常に誰かが家の中にいないとならないという事になった。週3日をデイサービス。残りを私と妹が休日で2日ずつ。隙間を嫁いで隣の市に住んでいる下の妹がカバーしてくれることになった。

 ところでうちの長女は隣の市で一人暮らしをしていたが、大学3年になり「就活もあるし一人暮らしも飽きたから」と6月に家に帰ると言い出した。言葉が妥当か分からないが、ある意味渡りに船だったがそう頼りにする訳にもなぁと思っていたところ、いつ家にいれば良いというのがあればと言ってきた。帰って多少なり手伝ってくれるのは有り難いが、家を出る前とは違い(いろいろ変わったので)生活の面倒は見てやれないよと言うと、「掃除洗濯も、弁当も自分で出来るから大丈夫」と心強かった。

 暫く、家族というのはただ減っていくだけだよなぁと思っていたので、なんか意外な経験をした月だった。

'19.6.21  随筆 

酒場の無駄金について

 思い返せば先週の金曜の夜がいけなかった。

 歌舞伎町に降りて選択肢は無限なのだが、連日寄ってるMではなく、ちょっとご無沙汰しているBに寄る事にした。金曜日はC嬢のシフト。同じ店でも店員によって客層が異なり、金曜はご無沙汰の私には知らない顔ばかりだった。

 まあそれは良いのだが、何やら皆音楽の話をしていて、BGMでイントロ当ての様になっていた。その程度の落ち着かなさは気にしないが、好みの曲が掛かると歌い出したり、カウンターを叩いてリズムを取る客ばかりなのだった。ここはサウスブロンクスかどこかか? 1杯という訳にもいかないので、ズブロッカ2杯で店を後にした。いつもと違い過ぎる呑み様にC嬢もさすがに不安そうな顔をしたため「ちょっと回ってくる」などと小芝居をする。

 しかし時間はとうに10時を回っており、そこから歌舞伎で巻き返すのは危険。取り敢えず地元まで帰ってしまう事にした。

 地元の選択肢は当然少ないが無難なWにした。先客7名でほぼ埋まったカウンターは私以外は互いに面識があるらしく、話題の中心には同年代くらいの女性がいるらしいことは分かった。

 この人が…何とも。最近つきあい始めた男性の事を好きだと言いながらくさしながら話し、あるいは自分がどういうタイプが嫌いで、そういう相手にどういう態度を取るかを自慢げに話す。

 何これみんな楽しいの? 勘弁してくれよ馬鹿らしい。なるべく店主を捕まえ話し掛けるも、こんな時間にフードが盛況でどうしても厨房に籠もりがち。その女性は少ししたら帰ったのだが、何とも後味が悪く白けたので2杯で店を出た。

 家に帰って、夜更かししている娘と録画したアニメを観ながら安スコッチを呑む。なんつーか、さっさと帰ってこうしてれば良かった。激しく無駄金使った感だけが残った。

 そんな訳で今週、酒場に一切寄らず帰宅してもいいんじゃないかという気になっている次第。



'19.3.31  随筆 

ゴミ回収有料化
 今月に入ってからというもの、週末の度に片付けをしていた。綺麗にするとか整頓するというのとは大分違って、「可燃ゴミ」「不燃ゴミ」に分類されるであろう物を片っ端からまとめていた。というのも我が市は4月からゴミ有料化となるのだ。今までその辺に転がっていても気にしていなかった物やバラせば粗大ゴミでなくなるから良いや位に思っていた物をかき集めたりバラしていた。

 一番多かったのがラティスフェンスの廃材。安物のラティス材は上塗り塗装をしても3年程度で駄目になる。子供たちが小さい頃はバーベキュー等していたので、廃材も燃料に良い位に思い取っていたのだが、いつの間にかそれも昔の話。そもそも実際には塗料が燃やすと臭いので殆ど使えなかったが。溜めた廃材は駐車場に積まれて、端の雨の当たる辺りは腐っていた。

 大物は母の部屋前のテラス。ラティスと同じアイリスオーヤマ製で、やはり駄目になる部分は駄目になっていた。これ、大き過ぎて市の粗大ゴミ扱いにすらならない。業者呼べレベルなのだ。自力で50cm以下の端材にバラすしかない。これらをバラすためだけにBOSCH製の電動ノコを買った。そっちの方がコスト高くないか?(苦笑)

 柄がアルミのホウキやハンガーラックにはディスクグラインダーの出番となる。大型ゴミには中途半端だし、バラすなら不燃ゴミだからいま出さないとならない。これも消耗の早いディスク代を考えると…。

 その他、色んな物をかき集めたのだが、途中からゴミなのか思い出の品なのか分からなくなっていた。ただ、少しずつ人の減っていく広い家の中に残り続ける身としては、どちらの物であれ、埋もれて生きていたくはないという気持ちもあった。

 ドラマや漫画のワンシーンで、実家の整理をしていると母親が取っておいた幼い頃の思い出の品を発掘するなんていうのがあるが、量が膨大ならそれもままならんだろう。それに大体、見つけたあとどうするかまでは描かれていなかったりする。

 「それを見る人がいなくなった物は取って置いても仕方がない」。父と祖父母を送った後に、建て替えで荷物を整理しながら母の言っていた言葉だが、実際には亡父が若い頃に撮りためた写真や組み掛けの模型なんて物までうちの納戸には仕舞い込まれたままになっている。

 それに手を付けるのは…と考え掛けたが、まあどうせゴミ回収有料化までには間に合うまい。放っておこう。