随筆/日記
公文書

'07.4.6  日記

また例によって酒場の話をだらだらと

 歌舞伎町某所。いつになく長居のK嬢は私のことをなぜか兄ちゃんと呼ぶパンクバンドのボーカル。「なぜか」じゃなくて私が彼女を「アルテイシア」と呼ぶのと対なんだけどさ。そのK嬢がいきなり「兄ちゃんは奥さんとセックスするのー?」と訊いてくるので「俺は機械で出来てるからセックスはしない」と眉一つ動かさず即答する。別に私のことを訊きたいわけでもなさそうなので「Kちゃんは特にセックス好きなの?」と話を振ってみる(乱暴な振りだ)。すると「うん!」とこれも即答。こちらは仰け反る。いいなー。旅人はセックス好きな娘の集まる村で一生幸せに暮らしましたとさ。終わり。やれやれ。

 勿論そんな話ばかりしているわけではないんだが。

 バーで女の人と何を話せばいいのかわかりませんと言う若者がいるわけだが、そりゃあ女だろうが何だろうが相手次第だろう。などと答えても面白くないので「まず政治の話だね。半島がどうとか」とアドバイスするも怪訝な顔をされるのみ。「あと私は趣味の話かな。グロックのフレームのシボ表現が絶妙、とか」。年長者の話なので黙って聞いてくれている模様。女の子は年長者だろうが何だろうが関係ないけどね。

 「なるべく此岸の話は避けろ。酒場の彼岸を目指すのだ」とは酔っ払いの神々からの預言。その辺の意味では私の話題はヨシだろう。そうだ、そう言いたかったのだ(ウソつけ)。

 そんな場所へパートナーを連れて行くのはある意味アウトなのかもしれないが、まあマナー違反という程でもなかろう。というわけで先日BAR BLACK LUNGに妻を連れて寄った。「一緒に行くからって認める訳じゃないからね」とザクザク釘を刺されながら歌舞伎町の裏路地に入っていく。「よくこんな場所嗅ぎ付けるねぇ」と感心され(いや呆れられ)エスコート。そんで先客がタケリコ画伯とK嬢だった。

 「兄ちゃん、奥さんとの馴れ初めは〜?」

 これこれ、ただのオバハンだったのか君は。


読書 小川洋子「小指の標本」(新潮文庫)

珍しく借り物。H嬢から借りた。標本室から冬の図書館を連想しつつ初めて読む小川洋子(のはず。確か)。


小隊司令部発

「栴檀林小隊」各トップページの更新とは別に、概ね2〜5日毎に更新中。
本欄のバックナンバーはブログ以外にもジャンル別に読める「公文書」で。 


'07.4.4  日記

年度末の月末の週末の話

 久しぶりに劇場で映画を観た。数週間前に妻から原作を渡されて読んだばかりの「アルゼンチンババア」(よしもとばなな著 幻冬舎刊)である。そういえば「今週の読書」には書いていなかったな。

 キャストは悪くはないが、主人公役の堀北真希の撮り方のためか、どうも“堀北真希が巧く撮れている映画”という様に感じてしまうのは穿ち過ぎか。鈴木京香は「アルゼンチンババア」と呼ぶにはエキセントリック具合が足りない気もするが、映画なのであんなものだろうか。

 肝心のストーリーの方はどうかというと、原作が程良くアレンジされている。元が淡々とし過ぎていたので、こちらも映画化するにはこの位かなという程度である。

 ところで本当につまらないことなのだが、ユリの部屋のマガジンラックに『Macworld』を見つけてしまい「どういう作り込みなんだ?」と引っかかってしまった。わからない。間に合わせに置くような雑誌でもなかろうに。つまらないことだが、どうでも良いことではないと思うが。

 「一番ラストの台詞は不要だよね」と妻。確かにそう思うが、原作がどうだったかをそもそも覚えていないので発言資格ナシ。

 帰り際、劇場のフライヤーのラックに見覚えのあるタイトルを見掛ける。「サイドカーに犬」(長嶋有著 文藝春秋刊)が映画化されるそうな。これは楽しみであるが、どちらかと言うと「タンノイのエジンバラ」の方が映画で観てみたい。難しいか。

 土曜は妻が出社で子供達はお泊まりのため、ここぞとばかりに3時間ほども走り回ってしまった。そのためか週明けから脚がだるくて腰が痛い。

 日曜は芝の手入れ。10平米ほどでバテる。待てよ、腰が痛いのはこのせいか?

 夕方はビールを呑みながら自転車の手入れ。夕食が終わる頃には随分な本数となり、食べ終えて暫く寝てしまった。

 3日続けて何か変な夢を見る。不快さだけ覚えており、詳細不明。先週忙しかったからだろうか。関係ないか。


画像だけ自転車ネタ。ACORの緑色のボトルを見つけたので買う。この酷いロゴは消せばいいやと考えていたがシンナーで消せず。


多摩サイでいつも折り返し地点にしている公園にて。ってどこだかわからんな、これじゃ。

小隊司令部発

「栴檀林小隊」各トップページの更新とは別に、概ね2〜5日毎に更新中。
本欄のバックナンバーはブログ以外にもジャンル別に読める「公文書」で。 


'07.3.26  随筆

知っているよく知らない人

 朝の電車でMさんを見掛ける。少し離れた所にいたのだけれど、立っていた私からは長いシートの一番端に座っているのが見えた。黒革のハーフコートの襟元からキャメルのマフラーが覗いていた。不機嫌そうな顔をして(朝の電車に乗っている人の9割は不機嫌そうだが)、小さく畳んだ新聞を読んでいた。

 Mさんは得意先の、付き合いのない部署の人だ。知り合った数年前はそことは違う部署にいて、それは自分と同い年位の彼にしては閑職に見えた。その部署というのは、下請けから上がってくる請求書やら何やらを処理する部署。つまりデザインがどうした撮影スケジュールがどうしたということをやりとりするのが大半である私の仕事からすれば、ごく一部だけの接点であった。閑職とは書いたが、以前は休日返上当たり前の部署にいた彼は、その話しぶりから閑職が嬉しいようですらあった。何よりその頃の彼はいつもにこやかで、肌の色艶も良いのだった。

 それから数年後、Mさんは以前いた部署に戻ることになった。その旨を私に話す時の彼はとても不機嫌そうだった。彼の戻る部署というのは、業務内容としては私の仕事と繋がりがあったので、私も営業の業務上「今後とも宜しくお願いします」と言ってみた。しかしMさんは「ええ」とも「ああ」ともつかない言葉を発しただけで、ほぼ無反応で苦笑いすらしなかった。私もつまらないことを言ってしまったと後悔した。

 いろんな繋がりで成立しているその部署の仕事にあって、実は新規参入は不可能に近いのを私は知っている。安くても巧くても駄目。OBがいるとか定型の接待を継続できるとかそういうのが必要なのである。まあ半分は噂なのだが。

 勿論そんなことは重要ではなくて、そういうどうでも良いことで意味もなく他人をうんざりさせてしまったということを後悔した。

 目が合ってしまったら会釈くらいは交わしただろうが、Mさんは私には全く気付かず電車を降りた。

'07.2.22  随筆

尋問

 「卓上のスタンドライトをこちらに向けて尋問する刑事」というステロタイプな絵面は、一昔前の刑事物のテレビドラマによくあった構図だけれど、現実にそんなことをする警官なんているのかしらんと考えながら、では今自分の正面でこちらにスタンドライトを向けている奴は一体何者だと光の向こう側の顔を睨み付けたところで目が覚める。

 気付かぬ内に浅い眠りに落ちていたらしい。光は車内に射し込んだ何かの反射光。私は正面に座る男を軽く睨み付けているのに気付き慌ててわざとらしく目を伏せた。幸いに男は正面を向いてはいなかったが、こちらに気付いていなかったかどうか。私はカラーグラスを掛けているとはいえこちらの目が見えない程に色が濃い訳ではない。

 体調不備にて午後出社。4種類の薬のどれかが誘う眠気なのか、体調自体がそうさせるのか、横になるとすぐ眠くなる。眠るほどに回復する気はするが、残念ながらいつまでも寝ているわけにはいかない日である。先々週だったか1日休んでしまったが、その時は電話とオンラインで出来る仕事は家でやってしまい、結局午後はあまり眠れなかった。いずれにしても今日は人と直接会わなければならないので行かないわけにはいかない。

 駅までにご近所の知り合いに3人会う。怪訝な顔こそされないが、こちらの苦笑いが辻褄合わせであるようにも思う。地元の銀行員でもなければこんな時間にスーツ姿の40男が歩いている町ではない。そもそも銀行員には見えないだろうが。

 街中は30代の女と幼児ばかり。もう幼稚園のお迎えの時間なのだ。下の娘は6時まで保育園である。今すぐ迎えに行きたい気持ちになるが、咳き込むたびに頭の痛む自分に何が出来るか。というかそれで仕事できるのか?

 ずっと住んでいる町なのに、とても不似合いな、町から拒絶された感じすら覚える。そんなことを考えていたからだろうか、座るなり眠り込んだ後にそんな夢を見てしまったのは。


'07.1.19  随筆

例によってまた酒場の話ばっかり

 随分前だが、よく行くバーの店主が、私の通いだした他の店を覗きに行ったことがあった。彼は「悪くないけど、あまりカクテルは作れないですね」と言う。注文するとカウンターの裏を凝視するので何かと思ったらそこにレシピが貼ってあるらしいと言う。実は私は全然気が付かなかった。もっともそこはハイブローなカクテルを頼むようなオーセンティックなバーではないし(彼の店もそうなんだが…)、私が頼むのはビール以外ではウオツカトニックの類か、ウオツカベースでロックスタイルの何かという程度だからそう大したレシピはいらない。

 もっともそれ以前に、私自身が不勉強だからそんなに面倒な物を知らないというのがある。ウオツカベースのカクテルなら多少は知っているが他は全然。ましてやモルトを初めウイスキーは門外漢。焼酎も全く知らない。バーではあまり関係ないが、ワインもドイツの白の区分を知っているだけ。でも何も困らない。好きな酒以外は知らなくても良いのだ。

 馴染みになると多少のワガママを言ってみたりすることもある。「ズブロッカ、フリーザーに入れてよ」とか「イェーガー入れて欲しいなぁ」とか。でも基本的にはその店にある物で間に合わす。ウオツカはキルビーで棚に出てるのだけとか言われたら物凄く困るけど。

 話変わって先日久しぶりに、1軒目がしっくりこなくて何軒か廻ってしまう。こういう時は「しばらく行き忘れていた店」に寄る。おでこを出しても相変わらず可愛いケイちゃんの新宿2丁目HENRYと、空港では金属探知器でヘソピの辺りをぐるぐるされるノリちゃんのG街クリシュナ。HENRYで隣に居合わせた紳士とガンオタ・ミリオタ話で盛り上がったら、深夜に某老舗メイドバーのマスターからHENRYでオタ話しない様にとメール届く。地獄耳。もしくは告げ口か。締めはいつものBAR BLACK LUNG。休肝日は無理だからせめて休BBL日を決めないととか、少し本気で考える。


読書 岸 久「スタア・バーへ、ようこそ」文春文庫PLUS

 得意先のカクテルコンテストで審査委員長を務めていたのが岸氏だった。と言っても面識はないのだが。先日MODの帰りに銀座1丁目にある岸氏の店の前を通りがかったが、雨の早い時間であったにも関わらず5分ほどで二組入って行った。文庫は出たばかりである。覗いてみるにしてもひと月は置いた方が良いだろうなと。


'07.1.13  随筆

買い忘れ

 私は買い物が上手くできない困った大人だ。「ああ、あれ買っておこう」と思う物のほとんどは買い忘れる。

 メモに残してもそのうちなくしてしまうから変わらない。「整髪料、残り少なかったな」と「M6ビスに合うワッシャー」でも手一杯なのに、「井上荒野の文庫、新刊出てるんだっけな」なんか加わったらもう駄目だ。いつ、どこで、どういう順番で買うか。こんがらがっている内に忘れてしまうのである。

 勿論こんなことをメインで考えて生活しているわけではなく、そういったことはパソコンのデスクトップの端で邪魔にならないように開いている砂時計のアニメーションみたいに、見るわけでも消すわけでもなく作動しているように、考えているのだ。

 どうせなら本当にデスクトップに置いておこうとメモファイルにして置いておくのだが、見て楽しい物でもないからあまり見ない。それに長くなると案件ごとのプライオリティが掴みにくくなって見るといらいらしてくる。「X月分電話代振り込む」と「ハーフブーツ」が混ざっている。大体「ハーフブーツ」って何だ? どんなのが欲しかったのか、そもそも自分が買うつもりだったのかも忘れている。

 題名、プライオリティ、記入日と実行目標日などといった項目を設けて、かつソートしやすいようにエクセルにしておくかとも一瞬考えるが、大した用事もなくいちいちエクセルを立ち上げるほど馬鹿らしくて苛々させられることはない。酒場で呑んでいる時にかかってくる得意先からの電話みたいなものだ。

 それはあれですか、少量生産で新発売予定だった玩具をつい最近うっかり買い逃してしまった悔し紛れに書いているんですかと問われれば、そうだ同好の志よ、私の悲しみを分かっておくれなどとふざけたことを書いてみたり。次ロットはまだか。


読書 吾妻博勝「新宿歌舞伎町 新・マフィアの棲む街」文春文庫

 “ご近所”のことは知っておかないとねぇ。それにしてもこんな怖い街で私は毎晩呑んでいるのか(爆)。本に書かれるほどのこともないですよと言われるかと思えば、「まあ表向きには何もないように見えますからねぇ」とは某所オーナーのコメント。おいおい。


'07.1.9  日記

時間

 先日の、仲間と集っての河原での年越しでも感じたが、なんか暖かい。毎年の行事なだけに温暖化を実感する。毎年暖かくなっている気がする。

 ところでご近所さんがロウバイの開花を確認されたというのをオンラインで見て、今更ながら庭のロウバイをしげしげ眺める。…咲いてる? う〜ん。根本にいつの間にか母がシソを植えていたなんてこともあり栄養の具合が悪い様だったのだが、どうやらこれは咲いている様である。

 さて庭に出たのは実はロウバイ観察のためではなく、塗装剥離のために薬剤に漬け込んでいるパーツの状態を確認するためだ。先日ヤクオフ購入したボブルビー、施されていた素人塗装を剥がさなければならない。ABSプラの塗面に対してはIPA(イソプレピルアルコール)への漬け込みが素材の溶解もなく最も有効のようだった。やや強力な「Mr.ペイントリムーバー」は短時間では全く変化がなかった上に臭気が強くいつまでも抜けずとても漬け込みに使えない。半ば悪戯心で金属用リムーバーを塗ってみたところ速効でパリパリと塗面が剥がれたものの当然のように地肌が溶けた。結局IPAでの漬け込みをしているが、3日間では全く変化が見られなかった。ビニルから漏れたら厭なので屋外に置いている次第である。

 ところで、3日で壊れる家電製品があればそれは明らかに不良品だが、1年ではどうなんだろうか。毎年切れてしまう電球はアリか? 世帯に沿って2系統に分かれる我が家の電気系は私の世帯だけやたらと電球が切れる。多摩中央ミサワホームでは「原因不明」が現状の結論だ。東京電力の調査ではうちの世帯に特に不具合はないとしている。経緯上「そうですか」と引き下がるつもりもなく、とりあえずミサワからダースで2種の電球を預かっているが、消費は止まらないという現状である。長寿命が売りのはずの「東芝ネオボールZ」が1年で切れるのは個体差の問題? さて。


寄って見れば確かに…


左からIPA、Mr.ペイントリムーバー、ラッカー薄め液、塗料はくり液


ザクザクですよ。やれやれ。


外したZボールには1年前の日付。


着実に減るストック。