GUN&MILITARY
公文書

'13.5.11  gun&military 

3Dプリンター銃は何を解放するか?

 ガンマニアなどという因果な趣味を続けていて必ず言われるのは「本物欲しいでしょう」という類の事だが、その態で今言われるのは「3Dプリンターあったら、あれ作るでしょ」だろうな。

 3Dプリンターで出力できる拳銃「Liberator」が話題になっている。普及しつつある3Dプリンターで“簡単に”プラスティック塊から本物の銃が作れるという物だ。米テキサス州のNPO「Defense Distributed(DD)」によって出力データが無料配布されている。DDは「合衆国憲法で保証された市民の自由防衛」のための銃の情報公開を目的としている。

 さて皆さんは銃という道具を構成する基本要素を認識しておいでだろうか? 銃に使用される実包は後端の雷管を叩くと撃発する様に出来ている。つまり実包を固定して何かで叩けばそれで銃になる。ただそれだけの事なのだ。プラスティックの様な強度の低い素材でも、低威力の実包なら撃てる。(※)
 ところでこのLiberator、実包を込める薬室の先に銃身が殆どない。普通の銃は銃身内の圧で弾を加速させるが、それがないのは火薬ガスの圧力を即拡散して圧を高めないためだろう。

 また薬室が銃の先の方にあって位置も高いのは命中精度には不利だが、薬室が破裂した際に射手の損傷が少ない。実包を後部から薬室に保持する部分は3本のピンで固定しているが、これが折れても真っすぐ真後ろには飛んで来ない様な形状になっている。要するに“安全対策”が施されている。

イラコバ氏風分解図と、試射後カメラ目線で得意げな開発者コーディー・ウィルソン氏。
 ちなみに日本の銃刀法では、これをこのまま作ると材質に関係なく実銃として違法になる。DLしたデータは眺めて愉しむに留めた方が良い。

 銃の世界でLiberator(解放者)という名の物は過去にもあった。大戦中に連合国が対ナチゲリラであるレジスタンス支援のため空中投下した単発式の拳銃だ。準えて命名する程の大義名分がこの銃にあるか否かは、さて。

※データは380ACP実包用の設計らしいが、公開されているVTRでは.22LRを発射している様だ。薬室/銃身は捻って脱着し基本的に使い捨て推奨。

DDのサイト 宣伝動画がイマイチ過ぎる。
開発ブログ Liberatorの画像はこちらで確認を。
Forbesの取材動画