page-3 モバイルの"力"

'99.3.2

日、FM番組で「奥田民夫が"モバイル"に凝っている」なんて話題になっていた。車を運転しながら何とはなしに聞いていると、「スポンサーから貸与されたカメラ付きのSONY VAIOを持ち歩いて、出先でフリーのゲームを楽しんでいる」という話だった。"モバイル"か…

 今時PCで行うことの多くは、ビジネス資料の作成にせよ趣味の活動にせよ日常の事になっている。これを自室の机上以外にも持ち出せるようにノートPCやPDAがあるのだが、実は用語の定義上は、持ち歩くだけでは「モバイルコンピューティング」とは言わない。このデータなどを更に出先からネットを通してやり取りするスタイルを「モバイルコンピューティング」というのである。

は3年間ほど、科学技術庁の外郭団体の刊行物で情報科学系の用語解説漫画を担当し、そのシナリオを書いていた。学歴は文系だが、理系な物が好きな私には楽しい仕事だった。「SGMLとは?」「ペンコンピュータとは?」なんて話を毎月2Pの漫画のシナリオにしていた。自分の知識をイミダスで確認する位で足りることもあれば、ネット検索したり、図書館に篭もる事もあった。ただ単に言葉の意味を登場人物に説明させただけでは漫画にする意味はない。生活に即したものに置き換えたり、例え話にしたり、勿論ストーリーとしてのオチもつけなくてはならない。その中でも「モバイルコンピューティング」なんて、はまってるテーマだったのでよく覚えている。

信端末用のジャックがある公衆電話(いわゆるグレ電)も携帯電話の類も普及してきた日本だが、回線が貧弱だったりサービスの質が悪かったり(料金が高いシステムとか)して、インフラがまだまだ発展途上なのはよく言われることだ。

 もちろん道具の方もまだまだ発展途上の様に思う。携帯する道具として、例えばヘッドホンステレオや携帯電話の様に普及するには、ノートPCにしてもPDAにしても、まだまだ"そのための洗練"が足りない様に思う。Win-CEは、バージョンアップができないというこれからのOSとしてはかなり「?」な所もあり、やはり流行らず、サブノートより小さい、前出のVAIOの様なカメラ付きやLet`sNoteの様な携帯電話直付け端子付きの1キロを切るノートPCが流行っている。何やら"子供スパイキット"みたいだが、これも試行錯誤の一つのカタチなのだろう。愛機のDuo+Dockも"合体ロボ"っぽかったが、ポートリプリケータという形式で今は普及している。

方、我らがAppleは、モバイルコンピューティングに関しては最近は実質何も提案がない。まさか今のPowerBookのスタイルが理想という訳でもないだろうに。デスクトップをそのまま持ち歩く…というのは随分昔に打ち出したスタイルだが、今もそのままでいいのだろうか? そういうスタイルでないと真価が発揮できないOSという訳でもないだろうに(もしそんなだったら私は使いたくないけど)。

 Appleが今提示している器はPowerBookG3という大型のノートPCだけ。デザインは素晴らしいが、とにかくでか過ぎ。それから重い。使い勝手を追究しただけではここまででかくする必要はない(断言するけど)。しかし今年にはP1と呼ばれるコンシューマ・ポータブル(普及型入門可搬機)が発表されるということで大きな話題になっている。新しいスタイルを提示できるのか、それとも単なるPowerBookG3のインターフェイスを整理した初心者向け廉価機なのか。期待が高まっている。今年のEXPOで発表という噂もあったが、この期待はあっさり裏切られた。日本で発表せずにどこで発表するんだ? と暫定CEOの"スター"Jobs氏に言いたかったPowerBookユーザーも多いだろう。

ころで前出のストーリーだが、ひょんなことからノートPCを手にした登場人物は、スタイルに憧れて持ち歩くも、結局道具本来の目的は果たさず、PCの力ではなくて腕の力を付けてしまったというベタなオチであった。しかし手のかかるノートPCを持ち歩くと、PCをいじることの方にエネルギーが行ってしまい、本来の使用目的よりそっちの方の力が付いてしまったりして、いやこれは自戒を含めての話だが。

日本語で読める最も信頼性の高いP1情報源の一つ→P1 NEWS

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