動物広告の日

'99.5.2

 これは東日本エリアの話題なのだが、この2〜3年ばかり、JRの駅構内ではこの様な広告をよく見かける。野生動物写真の第一人者、岩合光昭氏の様々な写真にシンプルなメッセージ。例えばこれ。

アザラシの親子の時間は約二週間。
あっという間にやって来る親離れの時。
大切なことが、別れによって伝えられます。
母の姿を求め鳴くことをやめる時、
子供は、厳しい自然を、生きることを、
覚えはじめます。

 ふむふむ、総理府の政府公報か? と思ってしまうが、よく見るとクレジットは「ジェイアール東日本企画」。

 JRも環境保全事業にでも乗り出したかと早とちりしてはいけない。これはJRの関連会社の広告代理店なのだ。JR自体の広告を制作するほかに、JRの所有するスペース(駅構内に限らず、関連会社のビルなどにある看板なども含む)の広告を仕切っている。

 公共広告に変わりない…かというと、さにあらず、これは要するに空いてしまっている看板のスペースをとりあえず埋めているものなのだ。この数年の不況は広告業界にも深刻な影響を与えている。郊外の駅ではこの看板が6枚も7枚も並んでいるところもある。また、列車内に旅行の広告が増えたと言っても、別に旅行ブームなわけではない。内輪のグループの広告を打っているだけだ。

 この平成不況が始まった当初は「3K削減」がよく言われた。「3K」とは、交通費・交際接待費・広告費の「3K」だ。確かに景気の良いときは、何のために打っているのかさっぱりわからない広告も多かったし、自社の力を誇示するためだけの広告もあった。しかし多くの企業にとって広告費は本来は贅沢な経費などではないはずだ。広告を打つということは、商品を売るということに直結している。これを削ってしまっては、売れる物も売れなくなるのではないだろうか?

 「動物広告」は、一般の乗降客は大して気にしていないかもしれないが、同業者としては哀しくもあり、鬱陶しくもあり、だ。

 さて、今日5月2日は「コーツー」で「交通広告の日」だ。ただでさえ憂欝な通勤列車が、一層鬱陶しくなる話で恐縮。おっと、GWの真只中だったか。

ジェイアール東日本企画 (嫌がらせのようにハイブローなトップページ。貧弱な環境でのアクセスはお勧めしない)