木造2階建て6LDK。築約45年。祖父が、金持ちの別荘をよく手がける建築屋に建てさせたというだけあってそれなりに変わった部分が多い。スレート葺きの洋風の本体に、瓦葺きの和室が繋がっている。和室の先に祖父の書斎が飛び出すような形で造られており、間は雪見障子になっている。木建ての窓はいずれも規格外で巨大な正方形だったり短冊状だったり。勝手口には御用聞き用の小窓があり、改築前はトイレが男女用それぞれあったりした。特に高級な仕上げとなっているわけではなく、場所によっては合板が飾りのないリベットで止められていたりする。木製の鎧戸(よろいど)は、言葉の通り鎧のようであり、挺身の力を込めてガラガラガラッと開け閉めしなければならない。家の中は、今でも雨の降る日には埃臭い"昔の臭い"がしたりする。
古いなりにいろいろ手を入れた家を取り壊し、建て替えをするということになるまでの経緯については、私個人ではなく家族に関わる極めてプライベートなことなのでここには書かないが、半月後にはこの場所にこの家が無いのかと思うと不思議な感じがする。それも寂しいとか、哀しいとか、それだけとも違う。
それはまるで終わってしまう夏休みのような、そんな感じなのである。
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年内に建て替えをする。そのために、今週末には近所の仮住まいに引っ越す。自分の家として住んだのは5年足らずだが、生まれたときから"自分の家"だった家である。いろいろな想いがあるのだが、実のところ今はそれを上手く文章に出来ないでいる。しかし書かずにはいられない。結局、たどたどしく同じモチーフで何度か書いてしまうことになるだろうが、目をつぶっていただければと思う(あなたが覚えていたらね)。
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