アフターミッドナイト

'01.10.11






 "深夜過ぎ"というネーミングからして、やはり寝酒だ。ベースは例によってウオツカで、クレームドカカオのホワイトで甘みを付けて、ジェットでミントの香りと彩りが添えられる。シェイクしてオールドファッションドグラスに。たまにショートグラスに注ぐ人もいるが、多分それは間違い。ウオツカベースで緑色というのも気に入っている。大抵の酒呑みに"締めの一杯"がある様に、私にとってのそれが、アフターミッドナイトである。
 しかし、どうもあまりメジャーなカクテルではないらしく、初めての店で注文をすると、恐縮してレシピを訊ねるバーテンもいれば、苦笑いをしつつ奥に引っ込むバーテンもいる。こちらも締めの一杯なのだから、別にハイブローでマニアックなものをオーダーしてバーテンの力量を試してやろうという腹があるわけではなく、純粋に最後に呑みたいカクテルなのだが、あまりスムースには出てくることがない。大まかなレシピを伝えつつ(大まかにしか覚えていない)、「ブラックルシアンのコーヒーがミントチョコになったような味ですよネ」位に言うのだが、実のところビニルカバーのレシピ冊子に載っている程度のカクテルのはずである。

 ところでこのアフターミッドナイト、カカオに昂る神経をなだめる効果があるとかの理屈はともかく、初めて呑んだとき寝酒と聞いて妙にしっくりと来る感じがした。なんでだろうなと考えていたら、ある菓子を思い出した。

 イギリスの「アフターエイト」というチョコレート。薄いチョコの間にミントペーストが挟まれている。上品な個別包装で、シックなデザインのパッケージに入っている。父が好きで、海外出張の度に買ってきていたが、外側のビターなチョコがあまり子供向きでなく、私はほとんど口にしなかった。元より、大人のお菓子であるから当然なのだが、子供の私にとっては"大人のお菓子"というもの自体がうまく飲み込めなかったものだった。
 そういえば、日本には「おめざ」という、目覚めてすぐに主に親が子供に甘い物を与える習慣があったが、寝る前に甘い物を口にするのは、まあ、要するに躾の悪い子供のすることである。ちなみに私が家に帰り着くまでにはまだ小一時間はかかってしまうので、寝酒というより食後酒と言った方が良いのかもしれない。


 水割りですら、やはり、馴染みの店で作ってもらうとしっくり来るものである。ましてやカクテルとなると店によって全く違ってくる。しばしば話に出てくる「MOD」は、銀座3丁目の文祥堂ビル、ソニアリキエルの裏にある。スタンディングのみで10人程度が定員だが、この季節ならまだ通りのテーブルでも快適に呑める。モルトが好きなら、なおお勧めの店。私はウオツカしか呑まないのだが(笑)。

MOD 中央区銀座3-4-12 TEL 03-3563-5465 OPEN 15:00-24:00