煙草の箱

'01.3.24

 昔使っていた机の引き出しから「ピース・ライト」の空き箱が沢山出てきたことがあった。以前吸っていた銘柄である。新しいものに変えるのが面倒で、私は煙草もビールも割に長く同じ銘柄を買い続けている。

 とにかく、以前は「ピース・ライト」だった。今吸っている煙草と違って、景品付きのキャンペーン(ボックストップを切り取って送るとロゴ入りライターが当たる、とかそういうやつだ)を頻繁に行う商品だったので、何かの気まぐれに集め始めた物をそのまま忘れてしまったのかも知れない。

 ちょっとばらしてみると、私が買い続けていた時期だけでも「ピース・ライト」の箱は3種類存在していた事に気が付いた。印刷されている内容はほとんど同じなのだが、展開すると型が違うのだ。どれがどう優れた型なのかは私にはわからない。しかし微妙に、あるいは決定的に、それらの型は異なっていた。その話を知人にすると「それ職業病ですよ。普通の人は煙草の箱なんてばらさない」と言われた。確かに私は印刷会社に勤めてはいるが、パッケージデザイナーでも型職人でもない。職業病という程のことでもないんじゃないかとは思うけれど、そういえば理由無く出来の良いチラシを取って置いたり、パンフレットを持ち帰ってきたりしてしまうことはある。まあ、最近はそういうことも少なくなったような気もするが。

 そんなことを思い出しながら、何の気なしに今吸っている煙草の箱をばらしてみた。バーテンが「どうかしましたか?」と訊ねるので、「いや、何かを挟み忘れていたような気がしてね」と適当に答えておいた。

 いや、そうだ。確かに何かを挟み忘れてきたような気がしてきた。