リスク回避型蜜柑

'01.3.22

 久しぶりにKさんの事務所に行くことになった。そこは千代田区の高級住宅街のマンションの一室で、3年位前に私が伺った時は確か住居兼事務所だった。某美大の講師でもあるCGデザイナーのKさんは、ある漫画家さんに紹介してもらったのだけれど、3人とも下の名前が同じということで印象に残っていた。もっとも、そのすぐ後に私は転職してしまったのでご無沙汰してしまっていたわけだが。

 その日はご本人の都合が合わず、マネージャーをされているお母様とお会いする事になった。この方がまた"ソサエティの高そうな"雰囲気の方で印象に残っていた。私の今の仕事では、普通に仕事をしていてこういう人とはお会いすることはあまりない。どういう業種ならあるのかはよくわからないけど。

 打ち合わせはまずケーキとお茶で始まるわけだが、いつも買う店まで行けなかったために近所で買ってきたケーキだと残念そうにおっしゃる。別に悪くないケーキだったが確かに華がないし、深みも特には感じられなかった。もっとも、仕事で伺った先で出されるケーキにしてはかなり上出来だった。

 打ち合わせが終わってからは蜜柑が出てきた。「最近、これをよく食べているんですよ。だから私は風邪をひかないの。どうぞ、よろしければ召し上って」と、出される。「ミカン」ではなく「蜜柑」という風情だった。沢山食べるからとまとめて安く買おうとすると大抵失敗するので、ちょっと高いけれど紀ノ国屋で買われるのだそうだ。残念な思いをしながらまた果物屋まで出掛けるというのは嫌でしょうとおっしゃる。確かにその通りだ。残念な思いと残念な蜜柑。そして"残念な"長い道のり。できることなら私もそういうのは避けたい。

 もっとも、味は普通の蜜柑だった。多分。その時の蜜柑にはたまたま違いがなかったのだろう。紀ノ国屋で買うということは要するに「リスク回避」ということの様であるから、そういうこともあるのかも知れない。