お父さんは二度タイムカードを押す

'01.01.22

 一週間の内に何日か、私は朝2回タイムカードを押す。

 出社時に押して、得意先に行くときにもう一回うっかり押してしまう…とかそういうことではない。出社前に娘の保育園のタイムカードを押すのである。

 大抵は9時に送り、17時まで(17時を過ぎると超過料金になる)。朝の用意も迎えも全て妻がやっているので、私の見送りは申し訳程度だ。今の職場は幸い緩いフレックスタイム制なので、妻が忙しい朝は私が見送りをする。と言っても、だらだら遅くなると「送っていってくれるんでしょ?」と言われて連れていくパターンが多い。

 だからと言って嫌々というわけではない。ベビーカーの扱いはちょっとしたものだ(かな?)。おかげで娘のB型はフレームがガタガタだ。しかし鼻をたれながら「モイッカイ!」を連呼されるとついつい何度もウイリーをして走ってしまう。

 踏切の交通整理のおじさんには「オバライチャン(お巡りさん)バイバイ」と話しかける。スーパーのおじさんは娘の名前を覚えていて声を掛けてくる。普通にすれ違えば言葉を交わすこともないような人たちと朝の挨拶を交わして保育園まで行くのだ。

 その道に較べると、タイムカードを押したそこから先はなんとつまらない道のりであろうか。大体が通勤列車とは、乗りたくもない列車に乗り込んで、行きたくもないところへ行くのであろう人が一カ所に集まっているのだから雰囲気も良いはずがない。もとより通勤列車がダメな体質の私なのでそこはもう、"とりあえずの自分"をでっちあげて何とかやり過ごす時間でしかない。

 その後、2回目のタイムカードを押すわけだが、そういう日に限って、3回目のタイムカードまでの時間は長い。

 帰り道、"とりあえずでない自分"に戻るために寄り道をして、とりあえず帰る。しかしその時もだらだら遅くなってしまうことが多い。