酒瓶眺めて

'00.11.30

 一人で呑みに行くと言って「何してるんですか? 時間を持て余しませんか?」と聞かれたことがあった。そんな疑問を持つ人は別に一人で呑み歩くことに興味自体持たなくて良いように思うが、ま、大抵「別に。酒瓶眺めているだけですよ」と答えたりする。

 最近よく行くのは歌舞伎町の真中のとあるバー。2〜3人用のテーブルが奥にいくつかあり、スツール10席くらいのカウンターがある。それから"立ち"のカウンターが通りに面して数メートルあるが、これは主にウェイティングに使われている。そして私は大抵そこで呑んでいる。店員もわかってくれてきて、私には席を勧めない。

 たまには珍しく知り合いに出くわすこともあるが、他で呑む時と同様、いつもは一人で呑む。通りに面した窓際なので外を眺めているのだが、特にそれが飽きないからというわけでもない。沢山の人々が行き交うのだが、何度か眺めている内に、実はいつも同じ様な人だけが歩いていることに気が付くのである。
"呼び込み"
店の案内の印刷物を差し出し、「キャバりませんかぁ?」とか話しかけてくる。
"スーツ"
大抵はほろ酔い気分然としており、しかし時間としては千鳥足はまだいない。
"ホステス"
明らかに(笑)。
"風俗店巡りみたいなの"
これも明らかに(笑)。
"外国人旅行者"
中国語を話す人は寒空の下でもコーラを飲みながら歩いていたりする。

 歩いているのはこのいずれかで、それ以外の区別が付けられない。自分がどれかと言えば、"スーツ"なのだろう。それぞれはそれ以外のカテゴライズには向かなさそうだし、それほどのバリエーションはない。例えて言うなら、ウオツカはスミノフでもタンカレーでもウオツカに違いはないという位の感じである。

 それでふと思ったのだが、これはカウンターで酒瓶を眺めているのと変わらないのかも。

 そんな訳で今夜も、私は相変わらずそんな酒瓶を眺めながら呑んでいるという訳だ。