適当なナポリタン

'00.4.29

 今日は仕事で大きな失敗をして、午後は落ち込んでいた。あまりに低調なので、なぜだろうかと考えたら、昼食をとっていなかった。昼食をとらなかった日の午後は、それでなくとも大抵低調なものだ。急遽、架空の予定をでっち上げて昼食をとることにした。

 こういう時は、あまり流行りの店には入らない。どちらかというと、平生は敬遠し勝ちな"適当な"喫茶店とかを選んでしまう。そして自分を卑しめるように"とりあえずメニューに載っているだけ"風のナポリタンとか頼んだりしてしまう。ウエイトレスのサービスも場末の風俗店の様に"適当"で、照明も路地裏の居酒屋の様に"適当"な店でとる昼食は、知らない国の知らない町で食べる知らない食べ物の様な味がする。勿論旨くも何ともないんだけど。

 広告・宣伝とかの仕事が長いので、飲食店の販促にも関わることがある。「元気が出るメニュー」などと称して、刺激があったり癒し系だったり、色々趣向を凝らすものが多い訳だけど、疲れているときは冗談でもそんな店に入ろうという気にはならない。そんなコンセプト自体がうっとおしくて仕方ない。

 いや、たまたま自分は「食で癒される」タイプではないだけなのかもしれない。多くの人は、元気なメニューで励まされて元気になったりするのかもしれない。本当のところは全然わからないんだけど、とにかく今日は"適当な喫茶店"で"適当なナポリタン"を食べて、午後をやり過ごした。

 終電で帰宅して、友達と喧嘩して顔に勲章を付けたという娘の寝顔を見ながら、そういえば、子供の頃は嫌なことがあっても「一日をやり過ごし」たりしなかったなぁ、などと考えていた。大人になると、実は一日の価値はガクンと落ちているという気がしてならない。いや、それとも私が下らない大人になってしまったというだけのことなんだろうか。

 そんな訳で一杯呑んでから寝ることにした。こういうときは、"適当"な酒ではなく、それなりにお気に入りのものを引っぱり出して呑む。

 はいはい。明日は良い日だといいよな、まったくよ。