「100%安全なモデルガン」


MGC コルトウッズマンスポーツの初期モデルと最終期HWモデル。奥の艶消しの方がHWモデルでサイドプレート等の金属パーツは「ミルコート」という防錆仕上になっている。

■「100%安全なモデルガン」
 一見、矛盾する様な事を謳って印象に残すキャッチコピーというのはあるが、「100%安全なモデルガン」というのはどうだろう。MGCが'79年にプラスティック製BLKモデルガン、コルトウッズマンを発売した時のコピーだ。

 銃趣味のない一般の人にとっては何のことだか分からないだろう。銃は危険な物だろうと思われるかも知れないが、モデルガンとは「弾を飛ばさない銃の模型」のことなので、形状とは裏腹に人に危害を与える道具ではない。玩具用火薬を使って音を鳴らしたり、弾を発射する以外の擬似的な作動をさせたりするモデル(BLK=ブローバックモデル:玩具用火薬で作動させて空薬莢を排出する)もあるので、その意味では、指を挟むとか鼻にぶつけるとか程度の若干の危険がない訳ではない。しかし一般に銃器を危険と言う場合は、使用者が他者に危害を与える能力に対して言うのであって、その意味での危険はモデルガンにない。一方で「弾を飛ばす銃の模型」であるエアガンに相当する本格的な玩具は当時はまだ殆どなかった。だからこのコピーは、自明の理であり表層的には矛盾はしていないとも言える。

 しかし、実はここで謳われる「安全」は、改造して実銃の様にはできないという意味の「安全」である。わざわざこんなコピーを冠した製品が発売されるということは、つまり安全でない製品があったという意味になる。だからその意味ではこれは普通に革新的製品を謳うコピーとも言えるが、当時には既にそういう製品はほぼなくなっており、あくまでも旧来からのモデルガンという物にイメージとして植え付けられていたもの(あるいは植え付けた相手)に対しての意思表明という側面が強いのだろう。


新旧パッケージ。発売当時の箱は硬質な発泡スチロールの個性的な物だった。

価格(発売当時)
スポーツ8,000円
スポーツ(CP-HW)12,000円
■ウッズマンのモデル化
 ところでコルトウッズマンがモデル化された事についてだが、実は当時の私は小口径の競技/プリンキングモデルということが「100%安全なモデルガン」のイメージに合っているからなのだと思っていた。だからMGCの用意した2つの広告イメージのうち、イヤープロテクターをして射撃をしている男性のイラストの方がしっくりと来て、バイクに跨りM1カービン片手にウッズマンを連射する「ワイルド7」の主人公・飛葉の方は、劇中に出てるんだろうな位の感想だった。実のところウッズマンは、「ワイルド7」('69〜'79)では複数の登場人物に使われていたのだが、私は「ワイルド7」コア世代より若干若い様だし(連載終了時で13歳)、ともあれ個人的には関心がなかった。

↑発売当時のウッズマンのチラシ(表裏)

 なぜこんなマイナーなモデルにしたのかという疑問を持っていたのは、そのためだけではない。当時父が出張先で買ってきてくれたアメリカのガンカタログの影響で、同種の拳銃ではハイスタンダード社製品の方が種類も豊富でメジャーに思えたのだ。言うまでもなく、日本での同社の知名度はないに等しいので、子供ながらに私の感覚の方がおかしかったのだが。


啓発情報紙「モデルガン愛好家協会ニュース」。協会と言っても実質はMGC。


いかにも向こうの感じのカタログ本。粗いモノクロ写真を食い入るように見ていた。

■ハードウェア
 余談が過ぎる様なので話を製品自体に移そう。ウッズマンの設計は、余計な改造をすると壊れるというのが安全策だった。そんな作りで耐久性は大丈夫なのかと思ったが、それなり撃ち込んでも変な壊れ方をすることはなかったし、作動も極めて良好だった。キャップ火薬専用というのが良かったのだろう。所有していたその前の世代のガバ(GM2)にしてもP08にしても、むらのある紙火薬故に起きた不調や故障だった様に思う。いや、むらがあったのは詰め手の方か。最初期には紙火薬仕様やBLKしないスタンダードモデルがあったが、基本はキャップ火薬専用のオープンデトネーター式で、後にCP式になっている。.22のカートに5mmのキャップ火薬で作動するピストンを内蔵するBLKカートなんて凄いと思うわけだが、勿論本当に弾頭部直径が0.22インチ(5.56mm)な訳はない。

 自慢の「実銃同様の分解方法」というのも、MGCであるから当然構造まで実銃同様な訳ではない。それでもロックプランジャーを押してスライドを外す分解方法は今までにない物なので新たなリアルというものに触れたような満足感があった。但しやりにくかったのだが。それに分解が進むとお得意のEリングも出て来る。

 手元には、高校生の頃に買った個体と、割合に最近(と言ってもMGCがまだある頃)買ったHW樹脂の個体があるが、共にスポーツモデルである。前者は色々弄っており、金属パーツを磨いたり、妙に指に当たるパーツなどがあったのでそれを削り込んでリブルーしたりしていた。箱を空けるまで忘れていたが、仕上げに失敗したパーツもとってあるところが貧乏性なのだろう。

 製品としては他にシュラウド付きバレルのマッチターゲットがあり、そちらの方が派手で人気も高かった様に思う。その他にも例によって何種ものカスタムモデルがメーカー製直営店製共に存在するが、MGCが活動を休止して随分と経つ今はいずれも中古市場でもあまり見掛けない。ネットの噂話では金型はCAWが持っているそうなので、32オートの様なバリエ展開でいずれはハンツマンやターゲッツマンを出すのかも知れない。その場合でも、買うのはやっぱりスポーツモデルかなぁ。


.22のカート比較。何を比較してるのか分からないくらい小さい(笑)。左から、MGC(オープンデトネーター)、MGC(CP-HW)、コクサイ(スタンダード)、CMC、実物(ダミーカート)


痛いので丸めたスライドストップの角。ちゃんと段差もつけてるのだがピンが来てない?
オマケは他社のウッズマン。コクサイ(下)はこの4.5'マッチターゲットの他に6'マッチターゲットとスポーツモデルを出していた。ちなみにこれはBLKではなくスタンダードで割合最近(と言ってもコクサイ倒産直後)に買った物。仕上げは良いけどフォルムが悪いな。MGC製がHWモデルでトリガーをメッキにしたのをイマイチだと思っていたが、サイドプレートがメッキのコクサイはさすがにアレ。東京マルイは突き出しのBBガンだが、組み上げてもおらず箱に入ったままだった。モデル名がターゲッツマンとなっており、ウッズマンとしては3期のモデルということになる。


この前のは… / さて次は…